遅れてしまいましたが、「GOTH」の感想です。6編の短編が収録された短編集。いや連作短編集といったほうが適当かも。
連作だからこそ、効果を発揮するトリックも使われていて、すごい。読み終えて数日たち、よく考えると感想を書く難しさに気付いた。気をつけないとネタバレになってしまいそうだ。
「暗黒系」
主人公の僕と森野夜は、GOTHと呼ばれる「人間の暗黒な部分に興味を惹かれるもの」。殺人者が落としたと思われる手帳を拾い、まだ発見されていない被害者がいることを知る。二人はその死体を捜しにいくことにする。
いきなりミステリだ。本格といって間違いない論理性。さりげなく散りばめられた伏線から、犯人を導く手際がこなれていてうまい。
「リストカット事件」
手に執着を持つ殺人者の話。
読者を真相からずらしていく語りが絶妙。だれが犯人かは最初からわかっているのだが、違うところで驚かされた。すごいね。
「犬」
こういう仕掛けになっていたのか!たまらず読み返してしまった。
これについては、何も書けない。
「記憶」
森野夜にスポットを当てた作品。足跡トリックが本格っぽい。ただ、その足跡トリックの使いかたが普通と違っているのに驚かされた。うまいとしか言えない。
「土」
人間を生きたまま埋めたいという欲求に耐えられなくなっている殺人者の話。よくこんなこと考えつくなぁ。主人公僕の、そういった事件へのかかわり方、立場の取り方が一番うまく出ている作品。最後が意味深。
「声」
一番好き。連作短編集の最後にこれをもってきますか。連作だからこそ、また前の5作があるからこそ生きてくる設定。お見事でした。すっかり騙されました。話もステキです。
総評
ある意味、隙がない作品集。削る文章がまったくないというか。
本格ミステリ大賞を受賞した本作。当時はこれは本格なのか、といった議論があったように記憶しているが、間違いなく本格といっていいでしょう。ただ、乙一はミステリの手法を借用しつつ、まったく独自の世界を構築しているような気がする。だから本格か否かの議論は不要かな。次回作「ZOO」も早く読まなくては。
□評価 4.5点
(1月6日読了 今月2冊 今年2冊)