私が振られたんだな。

「私より経済界の華やかさを選んだ」
「愛する女よが大事だった」


あんなに濃密な蜜月があったのに
突然に拒否をされたことを
受け入れられず辛かった日々…。


「ビジネスマン同士、戦友としてなら
たまにメールのやり取りぐらいは
しても構わない」


そんな風に言われて突き放されても
自分の気持ちに蓋をして
彼の提案(?)に縋った約7年間


私からメールをすれば
必ずスグに返信はくれるけれど
向こうから送ってくることは無かった。


ニューヨーク支店を立て直し
サウジアラビアの国家プロジェクトを
成功させ
民間企業の一社員なのに
霞ヶ関辺りでも有名だった彼。


振られても拒絶されても
恨む気持ちはなく…ただ悲しかった。


彼を失った私は廃人のようになり
くだらない男を渡り歩いて
自分をどんどん貶めていった。


年始のメールの返信で
彼が海外転勤になったことを知る。


中欧の某都市で慣れない営業職を
しているという。
「左遷かな?」なんて
彼らしくないネガティヴな言葉に
私の中でわだかまっていた何かが
フッと緩んで解けていった。


「日照時間が短くメンタルが不安定
ひとりに一台パソコンが与えられない
劣悪な職場環境で参っている」
彼には似合わない愚痴まで続く。


野心家だった彼。
経済や国家の中枢部に居たいんだと
いつも言っていた彼。


そんなデキる男の彼女だったことが
私のスティタスだったんだと
今更になって気がつく。


もう
私からメールをすることはない。
やっと心からサヨナラできた。


サヨナラ、けん。



かほ