海上郡うなかみ | 未知の駅 總フサ

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千葉県=東国は蘇我氏に縁の地であったという痕跡を探し、伝承・神社・古墳など諸々を調べています。

百嶋神社考古学にご興味を持たれた方はブックマークの「新ひぼろぎ逍遥」さんを訪ねてみてください。

現在の旭市の一部、銚子市の一部にあたる。
【和名抄】の訓は「宇奈加美」。編玉あたま、石田いしだ、石井いわい、大倉おおくら、小野おの、麻続おみ、軽部かるべ、城上きのへ、神代くましろ、須賀すか、立花たちはな、船木ふなき、布方ふま、三前みさき、三宅みやけ、横根よこねの16郷があった。
近年市町村統合で消滅するまでは「かいじょう」と呼ばれたが、昭和30年代までは「うなかみ」だった。
明治22年の町村制施行時には旭町あさひ、足川村あしかわ、飯岡町いいおか、伊豆原村いずはら、海上村うなかみ、浦賀村うらが、 嚶鳴村おうめい、三川村さんがわ、椎芝村しいしば、高神村たかがみ、滝郷村たきさと、銚子町ちょうしまち、鶴巻村つるまき、 富浦村とみうら、豊浦村とようら、豊岡村とよおか、船木村ふなき、本銚子町もとちょうしまちの4町14村からなっていた。
地名の「うなかみ」は「項髪」のことで、海中に突き出した地勢が馬のたてがみに似ている事に由来とする説、太平洋に突き出して海上にあるようにみえるからとする説がある。


『和名抄』下総国海上郡16郷
1.編玉郷あたまのごう
平安期にあった郷。阿玉とも書く。比定地は香取市阿玉川・布野・五郷内・貝塚・阿玉台などの一帯で、阿玉台貝塚がある。地名は「アタ(崖)・マ(場所を示す接尾語)」。

2.石田郷いしだのごう
平安期にあった郷。比定地は東庄町石出・東今泉・宮本から銚子市諸持の一帯。付近に今郡横穴群・前山遺跡がある。地名は「イシド石処」の転訛で石のある所という意味。

3.石井郷いわいのごう
平安期にあった郷。比定地は旭市岩井付近。地名の石井は岩堰の意味という。地形地名では石の多い川の意味となる。

4.大倉郷おおくらのごう
平安期にあった郷。比定地は香取市大倉付近で、大倉山毛貝塚・大倉南貝塚・玉田シジミ塚・側高遺跡などがある。地名の「オオ」は美称で「クラ」は「刳る」に関係し抉れた地形が元で崖・岩壁・田になどに転用されたものか。

5.小野郷おののごう
平安期にあった郷。比定地は銚子市岡野台と芦崎の地域とする説、東庄町笹川付近とする説、香取市下小野とする説がある。地名は「オ(接頭語)ノ(野)」で原野を指したものか。

6.麻続郷おみのごう
平安期にあった郷。比定地は香取市小見・高野・小見川・下小川・羽根川の一帯。地名の「続」は「績」の誤りが慣用化したもので、麻績部にちなみ麻糸を紡いだ地といわれる。地形地名的には「オ」は接頭語、「ミ」は水の意味で川辺を指したものか。

7.軽部郷かるべのごう
平安期にあった郷。比定地は香取市阿玉台・五郷内の地域とする説、東庄町鹿野戸付近とする説もある。地名は大化前代の部民の一つである軽部に由来する地名か。または「カル(刈=焼畑用語で崖の意味)・ベ(辺)」という地形地名か。

8.城上郷きのへのごう
奈良期にあった郷。「城上」は「城内」の誤りとする説、同一とする説がある。比定地は香取市木内・山川・白井・八本の付近。地名は「城上」とすれば「キ」は高地を指し、「ヘ」は辺か上(ウヘ)の約。

9.神代郷くましろのごう
平安期にあった郷。「カジロ」とも読む。比定地は東庄町大久保・舟戸・神田から旭市桜井・萬歳などにかけての一帯。地名の神代とは神稲代を改めたもので、神に供する稲田の地で香取神宮の邑であったという。あるいは「クマ(曲・隈)・シロ(シルの転訛で湿地の意味か)」という地形地名が元か。

10.須賀郷すかのごう
平安期にあった郷。比定地は旭市蛇園・後草・網戸の地域とする説、東庄町小南・粟野とする説がある。地名は「州処」で小規模な海岸砂丘や河岸砂丘をさす語。

11.立花郷たちはなのごう
平安期にあった郷。国衙領の一つで千葉常胤の私領であったが藤原親通に譲られた。東荘(橘荘)の前身といわれる。比定地は東庄町付近。地名は「タチ(台地)・ハナ(端、鼻)」で台地、自然堤防、微高地などの先端を指したもの。

12.船木郷ふなきのごう
平安期にあった郷。比定地は銚子市船木町・三門町・正明寺町から小船木町・塚本町の辺り。付近に野尻遺跡がある。地名は造船の用材を扱う船木部が居住していたことによるという。地形地名用語では「フナ」のつく地名は船型の窪地、「ハナ(端)」の転訛で崖地などを表す。その場合「キ」は接尾語。

13.布方郷ふまのごう
平安期にあった郷。「布方」は「布万」の誤りとされている。比定地は香取市府馬付近。地名は擬態語の「フハ」の転訛で柔らかい地という意味。ままた「フ」は節で高地を指すとも考えられる。

14.三前郷みさきのごう
平安期にあった郷。比定地は銚子市三崎町・上野町・春日台町から笠上町・小畑町・高神東町・高神西町の一帯。付近に南小川遺跡・屋敷林遺跡・粟島台遺跡・小川町貝塚・エビス山麓遺跡・トウゲ山遺跡などがある。地名は半島状の地形を指したもの。

15.三宅郷みやけのごう
平安期にあった郷。比定地は銚子市三宅町・四日市場町・赤塚町あたり。地名は大化前代の皇室の直轄領である屯倉にちなむ。

16.横根郷よこねのごう
平安期にあった郷。比定地は旭市横根を中心として旧飯岡町全域。地名の「ネ」は「峯」で山のことか、または岩礁の意味か。


海上郡4町14村
1.旭町あさひ
【合併地】網戸村あじと、匝瑳郡太田村おおた、十日市場村とおかいちば、成田村なりた
【現在地】旭市
【地名の由来】新町設立時に将来旭日昇天のような勢いをもって発展することを祈念して命名
【成立時期】明治22年

2.足川村あしかわ
【合併地】足川村のみ
【現在地】旭市
【地名の由来】古代にあった辛川(あしかわ)郷の遺称地か
【成立時期】江戸期

3.飯岡町いいおか
【合併地】飯岡村いいおか、岩崎村いわさき、上永井村かみながい、行内村ぎょうじ、下永井村しもながい、萩園村はぎぞの、平松村ひらまつ、横根村よこね
【現在地】旭市
【地名の由来】「イイ」は「ウエ」の転訛で上、高所の意味で自然堤防や微高地を指す 「岡」は丘陵のこと
【成立時期】江戸期

4.伊豆原村いずはら
【合併地】長塚村ながつか、本条村ほんじょう、松本村まつもと
【現在地】銚子市 伊豆原の地名は現存しない
【地名の由来】この地方の高原を伊豆原と称したことによる
【成立時期】明治22年

5.海上村うなかみ
【合併地】赤塚村あかづか、垣根村かきね、柴崎村しばさき、高野村たかの、松岸村まつぎし、三宅村みやけ、四日市場村よっかいちば、余山村よやま
【現在地】銚子市 海上の地名は現存しないが旧村内の学校名に残る
【地名の由来】地名の「うなかみ」は「項髪」のことで、海中に突き出した地勢が馬のたてがみに似ている事に由来とする説、太平洋に突き出して海上にあるようにみえるからとする説がある。
【成立時期】明治22年

6.浦賀村うらが
【合併地】椎名内村しいなうち、西足洗村にしあしあらい、野中村のなか、東足洗村ひがしあしあらい
【現在地】旭市 浦賀の地名は現存していないが旧村内の神社名に残る
【地名は由来】漁業の繁栄を祝賀して命名
【成立時期】明治22年

7.嚶鳴村おうめい
【合併地】後草村うしろぐさ、江ヶ崎村えがさき、琴田村ことだ、高生村たかおい
【現在地】旭市 嚶鳴の地名は現存しないが旧村内の学校名に残る
【地名の由来】「嚶鳴」の意味は友達同士が仲良く語り合う事なので、合併した村民が仲良くなることを祈念しての命名か
【成立時期】明治22年

8.三川村さんがわ
【合併地】三川村さんがわ、権田沼新田ごんだぬましんでん
【現在地】旭市
【地名の由来】「サン(山)ガワ(側)」で台地の側に位置することから名付けられたか また「ミカワ」の転訛であれば「ミ」は美称で川の側の地という意味になる
【成立時期】戦国期

9.椎柴村しいしば
【合併地】小船木村こぶなき、猿田村さるだ、忍村しのび、塚本村つかもと、野尻村のじり
【現在地】銚子市 椎柴の地名は現存しないが旧村内の学校名や施設名・JR成田線の駅名に残る
【地名の由来】この地域の高原を椎芝野と称したことによる
【成立時期】明治22年

10.高神村たかがみ
【合併地】単独で村となる
【現在地】銚子市
【地名の由来】古くは高見と書いた 他の地域よりも一段高い所に位置することによる
【成立時期】江戸期

11.滝郷村たきさと
【合併地】幾世村いくよ、岩井村いわい、清滝村きよたき、松ヶ谷村まつがや
【現在地】旭市 滝郷の地名は現存しないが旧村内の学校名や施設名に残る
【地名の由来】村域に小さな滝が点在することから命名されたか
【成立時期】明治22年

12.銚子町ちょうしまち
【合併地】新生村あらおい、今宮村いまみや、荒野村こうや
【現在地】銚子市
【地名の由来】河口の地形が酒器の銚子に似ていることから 鳥嘴・天不志とも書いたといわれ出伏(でふし)・遠伏(とおふし)からきたとの説もある
【成立時期】明治22年

13.鶴巻村つるまき
【合併地】大間手村おおまて、倉橋村くらはし、長尾村ながお、蛇園村へびその、見広村みひろ
【現在地】旭市 鶴巻の地名は現存しないが旧村内の学校名などに残る
【地名の由来】当村中央の見広坂にあった灌漑用水の水源として知られる鶴巻滝にちなむ
【成立時期】明治22年

14.富浦村とみうら
【合併地】神宮寺村じんぐうじ、中谷里村なかやり、仁玉村にったま
【現在地】旭市 富浦の地名は現存しないが旧村内の学校名に残る
【地名の由来】村名は漁業の繁栄を祈念し命名
【成立時期】明治22年

15.豊浦村とようら
【合併地】小川戸村こかわど、辺田村へた、三崎村みさき、荒野村突入地
【現在地】銚子市 豊浦の地名は現存しない
【地名の由来】江戸期に当地の海岸が豊浦港と呼ばれたことによる
【成立時期】明治22年

16.豊岡村とよおか
【合併地】八木村やぎ、小浜村おばま、親田村おやだ、常世田村とこよだ、塙村はなわ
【現在地】旭市 豊岡の地名は現存しないが旧村内の学校名や施設名に残る
【地名の由来】豊穣な高原に位置することによる
【成立時期】明治22年

17.船木村ふなき
【合併地】芦崎村あしさき、岡野台村おかのだい、正明寺村しょうみょうじ、高田村たかだ、中島村なかじま、船木台村ふなきだい、三門村みかど、無住の入会地及び山林地域
【現在地】銚子市
【地名の由来】造船の用材を扱う船木部が住んでいたことによる
【成立時期】平安期

18.本銚子町もとちょうしまち
【合併地】飯沼村いいぬまが単独で町となる
【現在地】銚子市 本銚子の地名は現存しないが銚子電鉄の駅名に残る
【地名の由来】近世以来当地は海陸産物の移出が多く、その産物に銚子産の名を冠したことによる
【成立時期】明治22年

 

 

参考文献

角川日本地名大辞典12千葉県/角川書店