あんなにお父さんやお母さんが面白そうに生きてる町ならば、ここで将来を送ってもきっと大丈夫と思ってくれるんじゃないかと。』(ひのき草木染織工房・加納容子さん)

岡山県にある昔ながらの街並みを生かした町づくりを推進している勝山についての一冊から。
町の活性化を考えると、今が賑やかになるだけではなく、次の世代にも繋がっていかなければならない。
これは都会のような利便性の無い地方にとっては命題なんです。

じゃぁどうするのか?

その一番シンプルな答えが冒頭の言葉のような気がします。
ちょっとくさい言い回しかもしれませんが、郷土愛以外に、それをなしえるものは無いはずです。
そしてその第一歩となるのは、両親がどのような生活を見せてあげられるのか…なんだと思います。
オフィスで映画を見るのがご法度なら、
なんで自宅でメールを見るわけ?
』(ウィルスのメッセージ)

ビジネスマンとして第一線で活躍していたマユクのパソコンに、ある日奇妙なウィルスが入った。
彼の人生に干渉するようなメッセージを残しつつ、急にシャットダウンしたり、スケジュールのソフトを入れ替えたり…。

しかしマユクはウィルスの気まぐれに引っ張りまわされながら、だんだんとこのメッセージが、彼のキューブ(ワークスペースを区切った敷居の中のこと)での仕事と生活のあり方へ対するメッセージであることに気づき始めます。
そしてそれに沿って仕事と生活を続けていく中で、彼は自分が良い方向へ変化していくことを感じ始めます。

上記のメッセージはそんなメッセージの一つです。
マユクというのは、ポジション的にも高く、前線で戦うビジネスマンなので、自分に当てはめるにはおこがましい部分もあったのですが、この言葉は胸に刺さりますね。
オフィスで映画を見るのがだめなのであれば、家でメールを見るのもだめじゃないとおかしいじゃないか。

ワーカホリックな人々へ向けて、ごく当たり前のメッセージを伝え続ける素敵なウィルスの物語です。
マユクはコンピューターをハックされて、強制的に従いましたが、この本を読んだ僕たちがそれを実践できるかどうかは、今の状況を打破したいと願えるかどうかにかかっているのかもしれません。
今は日本じゅう、どこにでもコンビニがある。コンビニにはゴミ捨て場があって、道にはタバコが落ちている。日本という国はホームレスのために出来てるようなもんさ』 (椎葉明郎)

元敏腕刑事で、わが子を死なせたショックからホームレスへ身を落とした椎葉が日本を表現したせりふです。
不景気だ何だと言いつつも、日本という国は裕福です。

僕たちはいつの間にかお高くなってしまったのかもしれませんね。
進め! 進め! 鬼という鬼は見つけ次第、一匹も残らず殺してしまえ!』(桃太郎)

芥川龍之介さん版の桃太郎より、鬼が島へ上陸して最初の台詞です。
平和に暮らす鬼たちは、人間を恐れていました。

角の生えない、生白い肢体。
そして嘘をつき、欲深く、同士討ちもするケダモノ…。
鬼の目から見た人間であり、そして襲撃者です。

物事には表裏、色々な見方があるものです。
こちらに言い分があるとき、相手にも言い分がある。
桃太郎という英雄伝説を、暴力によって島を征した乱暴者という目で見る事で、そんな問題提起をする、芥川龍之介さんの後期の作品です。
世界を滅ぼすほどの力を持つものなら、<ガンダム>!
 ディアナ様だけでも守ってみせろぉっ!
』(ロラン)

核爆発から、逃げ出すためにガンダムを必死に操作していたロランの台詞です。
∀ガンダムは政治的な色合いが強い作品でしたが、小説では下巻で初めて(?)ロランがパイロットらしい発言をしたシーンでした。

勢い任せの感情的な台詞のようでもありますが、力は使いようによって文字通り世界を滅ぼすことも出来れば、誰かを守ることも出来る…深い意味が込められているようにも感じますね。