
三島由紀夫
『純白の夜』
昭和31年7月30日 初版発行
昭和25年「婦人公論」に連載後、中央公論社から刊行された。
--------(抜粋)
昭和23年。村松恒彦は、勤務先の岸田銀行の創立者の娘である13歳年下の妻・郁子と不自由なく暮らしている。最近、恒彦は学習院時代の同級生、楠と取引が生じ、郁子もまじえての付き合いが始まった。楠は一目見たときから、郁子の美しさに心を奪われる。郁子もまた、楠に惹かれていき、接吻を許す。が、エゴチスト同士の恋は、思いも寄らぬ結末を迎えることに…。
著者はじめての長期連載小説
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驚くのはこの作品を書いた当時三島由紀夫は25歳
スゴイ才筆である。
バルザックの作品をこよなく愛好していた。
「最も卑俗なものを最も悲劇的なものに高めねばならぬ」
うう・・バルザックは未読である。
解説にあるように、ひとたび三島由紀夫という作家の中をくぐり抜けたとたん、
壮大な美しい悲劇に変貌する。
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不在というものは、存在よりももっと精妙な原料から、もっと精選された素材から成立っているように思われる。
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「僕は何も知らない。僕は何も知らないよ」
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『そろそろ俺も人を退屈させてはならぬという義務を人生に対して負わねばならないのだ。これは俺が若さを卒業したからだ』
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秘密は人を多忙にする。怠け者は秘密を持つこともできず、秘密と附合うこともできない。郁子の精神の或る懶惰が、秘密に対して払うべき敬意を要求する生活をもてあまさせた。
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彼女の体は小きざみに慄え、自分のものではないようなその胴が、西洋人形の藁を詰めた胴体同然に思われた。そして郁子の心を占めている言あった。
『私は楠さんを愛している!私は楠さんを愛している!』
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「私に罪はない。私に罪はない。私に罪はない。私に罪はない」
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