宮古島は、人生のターニングポイントにいる

人が呼ばれる場所なのかもしれない。

 

 

もちろん、

海で遊びたい!友だちをつくりたい!

という若者も沢山いるけれど。

 

 

おなじ寮で知り合った素敵なAさんも、

人生の重要なタイミングで

ここへ呼ばれたような人だ。

 

 

年齢は私より10歳ほど上で、

バスを待っているときに出会い、

おしゃれでやわらかそうな雰囲気で

なんとなく

「あ、このひと好きな感じだ」

と思った。

 

 

バスの中ではそれぞれの仕事の愚痴で

盛り上がり、

関西人だからなのか話しも軽妙で、

私にしてはめずらしく

ずっと喋っていられる人だった。

 

 

バスを降りるまえにLINEを交換し、

その日のうちに夕方お散歩行きませんかと

私から誘った。

 

 

日が暮れてから、

海辺でコーヒーを飲みながら

いつまでもお喋りをした。

 

 

彼女は旦那さんとお子さんふたり

(大学生くらいで手が離れている)

を残して単身で宮古島に

リゾートバイトにきていた。

 

 

そして10年ほど前に旦那さんの

浮気が原因ですったもんだがあり、

(相手も既婚者だったり)

ちょっと耳を疑うような大変な経験をされ、

立ち直るのに10年ほどかかったといった。

 

 

 

しかしその旦那さんも

「一生かけて償う」といったくせに

その後も浮気をしていたというから、

 

 

「え、旦那さんやばくないですか?

 なんで別れないんですか?」

と聞いてみずにはいられなかった。

 

 

情があるのか、

今さら別れてひとりで生きていくのも

大変だからなのか、

子どもの共同責任者としての

役割を果たしつつ同居している人

という位置づけらしい。

 

 

だから急に宮古島に3か月行ってくる

といっても旦那さんとしては

つよく反対もできない。

 

 

しかしAさんにとって、

宮古島でのリゾートバイト生活は

妻や母親としての役割から離れ、

ひとりの女性として生きる

人生でもなかなかない貴重な時間だった。

 

 

宮古島に来たばかりの頃は

同期の人達に誘われるがままに

みんなで出かけたりしていたそうだが、

そういう義理のつきあいに疲れて

あるときから一切やめてしまい、

 

 

ひとりでどこまでも歩いて

(登山部だったそうで、信じられない距離を

平気で何時間でも歩いていた)

行きたい場所やお店に行き、

 

 

仕事終わりや休みの日は

かならず海に潜っていた。

 

一緒に美味しいお寿司を食べに行ったとき。

手前は海ブドウの軍艦。

 

 

宮古島の海に毎日はいって

いままでの葛藤や苦しみも

洗い流されたのか、

 

 

もうすぐ任期が終わって

帰るころだね、というときに

彼女は海を見ながらこういった。

 

 

「ほんとうに宮古島に来れてよかった。

色々あったけど、あの大変なことがなかったら

宮古島にも来ていなかった。

 

 

今考えたら、旦那も

まだいろんな人に出会う前に

若くして結婚したから、

ほかの女性に目移りするのは

自然なことだったと思う。

 

 

詰めの甘さで家族を苦しめたことは

腹が立つけど、

今はもうそこに関しては許せている。

 

 

何も大変なことがない平穏な人生よりも、

色々あって今この景色を見ていられる

ことがうれしい」

 

 

ひとりの女性がおおきな自然の力で

癒され、立ち直っていく姿を

その瞬間に見た気がした。

 

 

彼女はそうして家族の元へ帰っていった。

空港についてから、AさんからLINEの

メッセージが届いた。

 

 

「アホの旦那と回転寿司食べて帰ってきた」

 

 

Aさんらしくて笑ってしまった。

 

 

私はまだ宮古島にいる。

まだ見るべきものがきっとあるんだろうな

という気がしている。