03 マツウラシンゴ2
あはははっ。なんだよそれぇ。
結局学校までの20分間、野球部の集団は笑い続けていた。真吾よりも先に校門から学校へ入っていく。はぁ、今日こそは久しぶりに僕だけが校舎を独占できると思ったのに。真吾はため息をつき、校舎へと向かった。
校門から中庭を抜け、第1棟と3棟をつなぐ渡り廊下を横切る。武蔵西中学校は地域で一番の生徒数を抱えているため、校舎は通常の中学校を3つくっつけたような巨大な建築物になっている。1棟と3棟は2階、3階を共有する形でつながっている。この2つの棟は主に1年生と3年生に割り当てられている。真吾は2年生なので、そのさらに奥にある第2棟へと向かう。2つの校舎の間は未舗装で、桜の木が植えられていたり池があったりしてここも中庭のようになっている。前日の雨で地面はぬかるんでいる。その中庭を突っ切り、第1棟と第2棟をつなぐ渡り廊下から第2棟へと入っていく。
7時32分、この時間に登校している2年生はまだ居ないようだ。校庭に面した昇降口の下駄箱を見ると、まだ誰も登校した形跡はなかった。ずらりと上履きが並んでいる。しんと静まり返った校舎。あのうるさい野球部集団は第1棟の中なのでここまで彼らの声は届かない。
—絶対に足音をたてないように、オレはリノリウム張りの床を慎重に進んでいった・・・
第2棟は4階建ての建物で、1階部分には専門教科用の教室、例えば理科室など、が入っていて、それぞれのクラスは2階と3階に割り振られている。4階部分は半分が大きな音楽室と会議室になっていて、のこりの半分は屋上となっていて生徒が入らないように窓には鍵がかかっている。もっとも真吾はよく学校の不良が掃除の時間に屋上でタバコを吸っているのを頻繁に目にしていた。一体どうやって中に入っているのだろうか。
階段を上って3階にある彼の教室へと向かう。2年4組の教室は3階の一番右端の教室、廊下の窓からはすぐ体育館の屋根が見える位置にある。
校舎内には彼の足音だけが響いている。ひんやりとした空気が淀んでいるような感じがする。鼓動が高鳴る、ひょっとしたらいつか・・・・。真吾は幻想を抱きながら教室へと入っていった。
結局学校までの20分間、野球部の集団は笑い続けていた。真吾よりも先に校門から学校へ入っていく。はぁ、今日こそは久しぶりに僕だけが校舎を独占できると思ったのに。真吾はため息をつき、校舎へと向かった。
校門から中庭を抜け、第1棟と3棟をつなぐ渡り廊下を横切る。武蔵西中学校は地域で一番の生徒数を抱えているため、校舎は通常の中学校を3つくっつけたような巨大な建築物になっている。1棟と3棟は2階、3階を共有する形でつながっている。この2つの棟は主に1年生と3年生に割り当てられている。真吾は2年生なので、そのさらに奥にある第2棟へと向かう。2つの校舎の間は未舗装で、桜の木が植えられていたり池があったりしてここも中庭のようになっている。前日の雨で地面はぬかるんでいる。その中庭を突っ切り、第1棟と第2棟をつなぐ渡り廊下から第2棟へと入っていく。
7時32分、この時間に登校している2年生はまだ居ないようだ。校庭に面した昇降口の下駄箱を見ると、まだ誰も登校した形跡はなかった。ずらりと上履きが並んでいる。しんと静まり返った校舎。あのうるさい野球部集団は第1棟の中なのでここまで彼らの声は届かない。
—絶対に足音をたてないように、オレはリノリウム張りの床を慎重に進んでいった・・・
第2棟は4階建ての建物で、1階部分には専門教科用の教室、例えば理科室など、が入っていて、それぞれのクラスは2階と3階に割り振られている。4階部分は半分が大きな音楽室と会議室になっていて、のこりの半分は屋上となっていて生徒が入らないように窓には鍵がかかっている。もっとも真吾はよく学校の不良が掃除の時間に屋上でタバコを吸っているのを頻繁に目にしていた。一体どうやって中に入っているのだろうか。
階段を上って3階にある彼の教室へと向かう。2年4組の教室は3階の一番右端の教室、廊下の窓からはすぐ体育館の屋根が見える位置にある。
校舎内には彼の足音だけが響いている。ひんやりとした空気が淀んでいるような感じがする。鼓動が高鳴る、ひょっとしたらいつか・・・・。真吾は幻想を抱きながら教室へと入っていった。
02 フクシマユウト1
ヤバイ、完全にヤバイ。
正直なところ俺はとっくに自分の気持ちに気づいていた。ただきっかけが無かっただった。ほんの数日前まではこんなに心が乱されるなんて思っても見なかった。だけど、その自分の気持ちを自分の口から言葉にした事で、完全に俺は気づいてしまったんだ。あぁ!どうすればいいんだ!
今日もまた学校が始まる。俺と彼女はどんな言葉をかわすだろうか。まず挨拶をしよう。声のトーンを押さえるように気をつけないとな。そしてその後に昨日見たドラマの話でもしようか、いやそれとも最近駅前にできた雑貨屋の話の方がいいのか?あー考えれば考えるほど訳が分からなくなってくる。先週までは普通にできてたじゃないか!なんでこんなにあれこれ考えなきゃいけないんだ?今日から突然ぎこちなく接するなんて事したらそれこそキモがられるっての。とか考えてる時点で・・・・もうなんか何を考えても堂々巡りに陥っている気がする。だったらいっそ何も考えない方が自然体でいいんじゃないの?とか考えてる時点で不自然だしなぁ。あ、そうだ今日は買ったばっかのナイキのスニーカーを履いていこう。部活で汚れるのはイヤだけ ど、まだきっと学校中で俺しか買ってないだろうな。セントパトリックスデーモデルのグリーンのダンク。あの子はあのスニーカーを見てきっとスゴイって思うだろうな。でも自分から靴について触れたらダサいからそれだけは絶対に気をつけなきゃな。
さて、そろそろ学校いかなきゃな。でもあれだけ降ってた雨も上がってるし今日はなんかいいことありそうな気がするな。
正直なところ俺はとっくに自分の気持ちに気づいていた。ただきっかけが無かっただった。ほんの数日前まではこんなに心が乱されるなんて思っても見なかった。だけど、その自分の気持ちを自分の口から言葉にした事で、完全に俺は気づいてしまったんだ。あぁ!どうすればいいんだ!
今日もまた学校が始まる。俺と彼女はどんな言葉をかわすだろうか。まず挨拶をしよう。声のトーンを押さえるように気をつけないとな。そしてその後に昨日見たドラマの話でもしようか、いやそれとも最近駅前にできた雑貨屋の話の方がいいのか?あー考えれば考えるほど訳が分からなくなってくる。先週までは普通にできてたじゃないか!なんでこんなにあれこれ考えなきゃいけないんだ?今日から突然ぎこちなく接するなんて事したらそれこそキモがられるっての。とか考えてる時点で・・・・もうなんか何を考えても堂々巡りに陥っている気がする。だったらいっそ何も考えない方が自然体でいいんじゃないの?とか考えてる時点で不自然だしなぁ。あ、そうだ今日は買ったばっかのナイキのスニーカーを履いていこう。部活で汚れるのはイヤだけ ど、まだきっと学校中で俺しか買ってないだろうな。セントパトリックスデーモデルのグリーンのダンク。あの子はあのスニーカーを見てきっとスゴイって思うだろうな。でも自分から靴について触れたらダサいからそれだけは絶対に気をつけなきゃな。
さて、そろそろ学校いかなきゃな。でもあれだけ降ってた雨も上がってるし今日はなんかいいことありそうな気がするな。
01 マツウラシンゴ1
今日も一日が始まる。
夜通し降っていた雨も上がって、町中の雨粒が太陽の光を反射している。雨上がりの匂いがする。午前7時10分、学校までは20分かかるから、ちょうど開門の時間にはつくだろう、と真吾は思った。彼は誰もいない校舎が好きだった。普段は人で満たされ、騒々しさがある事が常のようなあの場所が静寂に包まれているのを感じるだけで、彼は言い表しようの無い高揚感を覚える。
—ヤツらにバレないように、身を屈めて廊下を横切る・・・
まるで何かとんでもない出来事から自分だけが無事で助かってしまったような、そんな感覚。
—友達を助ける事ができる可能性があるのは、そう、オレだけなんだ・・・
通いなれた通学路をひたすらにたどってゆく。30メートルくらい先を、緑色のジャージを来た野球部風の集団が歩いている。野球部の一年だな、と真吾は考えた。真吾の通ってる武蔵西中学校は、県内最大の生徒数と、部活動の県大会での優勝数、そして悪夢のようなデザインと色をしたジャージで有名な中学校だった。お世辞にもガラのいい学校とは言えず、特に運動部の生徒は信じられないくらい低能だ、ミドリムシという不名誉な蔑称で呼ぶ大人が居るということはみんなが知っている事実だった。
中でも野球部は、その徹底した根性論的指導法と規律の厳しさで有名で、うっかり入部してしまった哀れな1年生は、開門と同時に登校してグラウンド整備をさせられる。緑色のジャージに身を包んだ集団が広大な校庭を横並び一直線で土をならす光景を初めて見たとき、真吾は巨大な芋虫が寝返りをうつのを想像せずにはいられなかった。
なんで野球部がこの時間にいるんだ?真吾は疑問に思った。昨日の雨でグラウンドはぐしゃぐしゃだろう、そんな事は野球部にだって分かるはずだ。そして同時に怒りを覚えた。せっかく完全に生徒の居ない校舎に入れると思ったのに!野球部の集団は真吾の前方で大笑いしている。あんな奴らが居たらせっかくの静けさが無くなってしまうじゃないか、真吾は暗澹たる思いで通学路を進んでいった。
青空に野球部員たちの笑い声がただ響いていた。
夜通し降っていた雨も上がって、町中の雨粒が太陽の光を反射している。雨上がりの匂いがする。午前7時10分、学校までは20分かかるから、ちょうど開門の時間にはつくだろう、と真吾は思った。彼は誰もいない校舎が好きだった。普段は人で満たされ、騒々しさがある事が常のようなあの場所が静寂に包まれているのを感じるだけで、彼は言い表しようの無い高揚感を覚える。
—ヤツらにバレないように、身を屈めて廊下を横切る・・・
まるで何かとんでもない出来事から自分だけが無事で助かってしまったような、そんな感覚。
—友達を助ける事ができる可能性があるのは、そう、オレだけなんだ・・・
通いなれた通学路をひたすらにたどってゆく。30メートルくらい先を、緑色のジャージを来た野球部風の集団が歩いている。野球部の一年だな、と真吾は考えた。真吾の通ってる武蔵西中学校は、県内最大の生徒数と、部活動の県大会での優勝数、そして悪夢のようなデザインと色をしたジャージで有名な中学校だった。お世辞にもガラのいい学校とは言えず、特に運動部の生徒は信じられないくらい低能だ、ミドリムシという不名誉な蔑称で呼ぶ大人が居るということはみんなが知っている事実だった。
中でも野球部は、その徹底した根性論的指導法と規律の厳しさで有名で、うっかり入部してしまった哀れな1年生は、開門と同時に登校してグラウンド整備をさせられる。緑色のジャージに身を包んだ集団が広大な校庭を横並び一直線で土をならす光景を初めて見たとき、真吾は巨大な芋虫が寝返りをうつのを想像せずにはいられなかった。
なんで野球部がこの時間にいるんだ?真吾は疑問に思った。昨日の雨でグラウンドはぐしゃぐしゃだろう、そんな事は野球部にだって分かるはずだ。そして同時に怒りを覚えた。せっかく完全に生徒の居ない校舎に入れると思ったのに!野球部の集団は真吾の前方で大笑いしている。あんな奴らが居たらせっかくの静けさが無くなってしまうじゃないか、真吾は暗澹たる思いで通学路を進んでいった。
青空に野球部員たちの笑い声がただ響いていた。
