老人と海・ヘミングウェイ・新潮文庫 の解説 | まさひこのの書評と解説のページ

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僕が読んだ本についての、書評と解説を書いてみました。

 

 

◆老人と海と少年の友情

 

「老人と海」は、ヘミングウェイの1954年のノーベル文学賞受賞作である。

 

 

老いた漁師はメキシコ湾流で漁をしていたが、84日間ものあいだ、一匹も獲れない日々が続いていた。老人の名は、サンチアゴ。サンチアゴと一緒に、以前、漁に出かけた少年、マノーリン。サンチアゴに漁の仕方を教わった少年は、老人のことを慕っていた。老人は老いていても、希望と自信を失っていなかった。……

 

 

文中の言葉によれば、少年は、サンチアゴの「漁師仲間」である。この小説は、漁に出ている場面ももちろんであるが、この、老人と少年のやりとり部分も、温かく心地よく、読みどころだろう。タイトルが表すとおり、老人は海と友人関係(を超えた深いつながり!)にあるが、この少年もまた、かけがえのない彼の友人であろう(タイトルの副題に「〜 または老人と少年」と添えてもいいくらいで)、説明は不要だ ── 「少年がそばにすわって見守っていた」(134ページ)し、老人は「あの子がいりゃ」と何度も言うし。

 

 

読んでいて気になったのは、老人の見るライオンの夢のこと。この夢のライオンとは何か。それは、男のロマンなのではないだろうか。いまだ見果てぬ男たちの野望、のような。自分の手中にすべてをおさめ、掌握し、手なずけ、そして「猫を飼うように」という……。

 

男のロマン、というのがアレなら、単に、人の野望やら壮大な夢、といってもいいが。

 

 

やがて、老人は少年に見送られて、漁に出る。「老人」と「少年」との関係は良好だったが、「老人」と「海」の関係はどうだろうか。「いまはツキに見放されている」(33ページ)。良好とはいえないようだが、はたして漁の行方は……。

 

 

※ 老人と海・ヘミングウェイ・新潮文庫・2020年7月発行。1954年、ノーベル文学賞受賞。