セーラー服と機関銃・その後─卒業─・赤川次郎 の解説 | まさひこのの書評と解説のページ

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僕が読んだ本についての、書評と解説を書いてみました。

 

高校卒業まで、あと四ヵ月。星泉、十八歳。泉ファンクラブの同級生、智生との会話で、泉が「もういい加減忘れたいわ」と話しているように、泉は一年前の「あの危ない日常」とは無縁な、普通の平穏な高校生活を送っていた。しかし、そんなある日。食事のために寄った、なじみの中華料理店で、刑事に、あらぬ疑いをかけられて、警察署へ連行されてしまう(この刑事の、泉に対する憎しみあふれる仕打ちが怖い!)。結局、この日、泉は容疑不十分で解放される。

 

翌日の昼。泉は脅されて、浜口(前作で、目高組組長の泉と対決したことのある相手)の車に乗せられる。連れてこられたのは、高台にある住宅地。最近、不動産会社の暗躍により、住民は追い出され、住宅はところどころ、歯が抜けたようになくなっていた。浜口は、住民を脅している無法な連中を、泉と目高組に追い払ってもらいたい、と頼んできた。でも、いまはもうただの普通の女子高生。そんな依頼、即座にお断りだが、泉が住宅地にある商店街に通りかかったとき、連中による、住民へのひどいいやがらせを目撃して、ほっとけなくなってしまい・・・。

 

「セーラー服と機関銃・その後─卒業─」は、前作から九年後、1987年の7月に、カドカワノベルズとして刊行されたもの。小説の時代設定は、刊行された頃と同時代とみていいだろう。土地の価値をめぐって、現実に地上げ屋が活躍していたあの頃。220ページのセリフ「いやがらせが続いていることは、誰が見たって分るのに、一つ一つが法に触れないからって手も出さずにいるんじゃ、何のための警察だ」など、当時の国の、一般住民を守る力の欠如を、思い起こさせる。

 

今回の作品の読みどころのひとつには、〈急転性〉や〈急展開ぶり〉が挙げられるだろう、と思った。浜口の用心棒の男の態度の急変など序の口で、登場人物たちの意外な変容、言動の突発性やストーリーの急転、事態の急展開と、なかなかに目を見張るものがある。読者の描く予想とか期待を、いい意味で、裏切っていく、意外にジェットコースターのような展開。

 

そうそう。泉とユリのタクシー乗っ取り騒ぎ・・・これは、悪い冗談なのか(笑)

 

※写真は、2006年9月、長澤まさみ主演のテレビドラマ化にあわせて改版刊行された角川文庫。