希望のニート 現場からのメッセージ | Book Review’S ~本は成長の糧~

希望のニート 現場からのメッセージ

希望のニート 現場からのメッセージ 希望のニート 現場からのメッセージ
二神 能基

東洋経済新報社 2005-05-13
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★★★★★★★☆☆☆



就職活動をしている時からなんとなくですが、ニートという言葉に関心を持っていました。これは就職活動という社会への関わり方を選択する大きな時期だったからこそ、ニートと呼ばれる人たちはどのような生活をし、社会ではどのような位置づけにあるのか知りたかったからかもしれません。この本を読む前にまず、有名な玄田有史さんのニート―フリーターでもなく失業者でもなく を読む方がよかったのかもしれませんが、我慢できずに読んでしまいました。

著者の二神能基さんはNPO法人「ニュースタート事務局」の代表を務めていらっしゃいます。この「ニュースタート事務局」ではニートと呼ばれる人とその家族に対し、独自の手法によってニートから脱することをサポートしています。

ニートの定義

まずニートとは日本ではどのような定義をされているのでしょうか。日本では、
「15歳から34歳までで、学校卒業後に職探しも通学もしない未婚の若者」という定義がなされています。つまり、勉強もしないし働きもしない若者のことを指し、英語では「Not in Education,Employment or Training」となり、この頭文字を取って「NEET(ニート)」と呼ばれています。ここまでなら多くの方が知っていると思います。

◆教育の失敗から生まれていく

ニートと呼ばれる人たちは働く意欲がないから「働かない」のではなく、さまざまな理由によって「働けない」ケースが非常に多いのです。働けない最も大きな理由は、人間関係構築能力の欠如です。この人間関係構築能力が足りない原因は、突き詰めれば全て親の教育に問題があるからだ、となります。

◆テストで高得点=◎という画一的な価値観

高度経済成長を続けた過去の日本で人生を歩んできた両親の価値観は「高学歴、高収入が幸せな人生につながる」となってしまっている人が大半です。だから、意識的もしくは無意識に子供に対し、受験をすること学校のテストで好成績を取ることを求めます。子供はそれに応えるために勉強し続けます。結果、どうなるのか。毎日、友達と遊ぶことをせずに机に向かって一人で勉強し続けた結果、人と接することができなくなります。

ニートを生み出してしまう家庭はニートになった本人も、その両親も非常に生真面目なケースが多い。両親の子供に対する愛情は、子供への期待に変換され、それに上手く応えることのできない子供は自己評価を下げ、自己嫌悪に陥り、それでも応えようと努力し、失敗する、という悪循環に囚われてしまいます。そして、その悪循環さえも拒否してしまった子供は、何も行動をしなくなったり、親とのコミュニケーションもはかろうとしない引きこもりへとなっていくわけです。

◆変わりゆく価値観

ニートは現代社会の問題が背景として大きく関係しています。今までは、特に現在50歳以上の世代は物欲が行動の原動力となっていました。多少は苦しい思いをしても、マイホームやマイカーなどを自分のものにすることを夢見て働いてこれたわけです。しかし、物が余ってきた現代で育った若者達は、物に昔の人たちほどの価値を見出せなくなってきました。物ではなく働くことによって社会にどれだけ貢献できるのか、自分がやりがいを感じられるのかといった精神面が重視されるようになってきました。

しかし、まだまだこの若者の価値観の変化に社会は対応しきれていません。その結果、働き始めたもののやりがいを見つけることができずに辞めていくケースが後を絶たない。ニートという存在が、今の社会に対して問題提起をしているとも言えます。効率性重視の社会からもう一歩進んだ社会へと脱皮する時期が来ているのかもしれません。

◆感想

ニートに対して、如何に厳しい評価を自分がしていたのかよくわかりました。それは、すべてマスコミによる報道や、大人や社会のニートに対する対応を見てきたからです。本書を読むことによって、今までニートに対して持っていた固まった考えが少しほぐれました。しかし、やはりニートになってしまうということ自体は非常に問題であり、厳しい言い方をすれば本人の問題です。そして、一番大きな問題は教育にあると言えるのではないかと感じました。教育は学校教育、家庭内教育のどちらも指します。つまり、机上での勉強以外の学びをする機会を増やし、人間同士が触れ合うことの大切さを気付かせる機会を徹底的に増やすことで、この問題は少しずつ改善していくように思いました。

希望のニートというタイトルどおりの内容とは少し違うかな、という印象を受けましたが非常に面白い一冊でした。やはり、現場で活躍している方が書くとそれだけ説得力も強いものとなります。本書で「あらゆる子育ての結果は偶然にすぎません」という言葉がありますが、もしかすると僕自身がニートになっていたのかもしれません。それは、あくまでも仮定の話ですが、それぐらいどの家庭でも起こりうる、そんな社会が形作られているとも言えます。

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