『「ダメ子育て」を科学が変える!全米トップ校が親に教える57のこと』

 星友啓

 SBクリエイティブ 2023715


「最新の脳科学と心理学に裏打ちされた子育てメソッドや習慣の中から家庭や教育現場ですぐに実践できるものを厳選して、シンプルに解説」スタンフォード大学にある中高一貫校、スタンフォード・オンラインハイスクールの校長を勤める著者記す、子育てメソッドの解説書。



・現代では以前にもましてさまざま子育て情報が溢れている。まず選んで試すなら、多くの人に客観的効果の確認された「科学的な子育て」を。ただし、「科学的な子育て」といえども合う合わないはある。子供の反応を見ながら取捨選択しよう。


・子どもが感情的になっている時に「しつけ」を試みるのは逆効果、まずは子どもが落ち着くことができるようなサポートを。落ち着いてから振り返りをしよう。


・勉強だけでなく、多様な体験を通してさまざま能力を伸ばしてあげることが、脳を効率良く成長させるベストなサポート法。


・人間のやる気の根本にあるのは、人とのつながり「関係性」、自分が何かできるという感覚(有能感)、自分が決断したことを自分の意思に沿ってやっているという感覚(自律性)、これら「心の3大欲求」が満たされると、心が満たされる。


・「結果」と「努力」なら「努力」を褒めるのが良い。褒め言葉に「結果」や「比較」を持ち出すのは避けよう。ただし「努力」を褒める場合も褒め方には注意。



・親からの「決めつけ」は呪い。ネガティブなステレオタイプ、ポジティブなステレオタイプに関わらず、子どもにレッテルを貼り過ぎてはいけない。


・脅しやご褒美で子どもを動かす「しつけ型」「コントロール型」の子育ては、短期的には効果を発揮するが、頻繁に長期的になると子どもの心や身体、社会的リスクにつながる。


「自律サポート型」子育ては、人間の「心の3大欲求」を全て満たして、子どもの心にポジティブな影響をもたらし、健全な社会性を育み、成績や学校でのパフォーマンスも向上させる。


・子どもたちがゲームに夢中になるのは、ゲームが子どもの心の3大欲求を満たしてしまうから。他の方法でその欲求を満たせるようサポートしよう。


・スマホを使っていなくても、近くにあるだけで、集中力はパフォーマンスが10%20%下がる。「使わない時は遠くに隔離」「テクノロジーブレイクを取る」「親自らが手本となる」などの方法で、テクノロジーと正しく付き合えるようにしよう。


・子どもの「悪い」「ダメ」「できない」は成長では当たり前のこと、親の期待が、子どもの現在の成長段階や子ども自身に合っていないのかも知れない。目標ややり方、習慣の見直しを。


・やり方や習慣が合っていても、子どもの変化が見られるまでには時間がかかる。2ヶ月くらいは辛抱強く様子を見よう。


・現代は親が育児に対するプレッシャーを感じやすい環境にある。


・人間の心は良いことよりも悪いこと、ネガティブな感情にフォーカスしやすくできている(ネガティビティー・バイアス)。


・子どもの毎日の変化は、あったとしても少しずつ、なかなか目に見える形で現れてこない。


・人間は社会的に動物なので、人類はワンオペ育児をするようにできていない。


・育児ストレスは、多くの人が自然に感じることだと受け入れ、自分の気持ちと向き合い、ストレスマネジメントのスキルを身につける必要がある。



子育てや教育に関する本で、気になったものはなるべく手に取るようにしているが、本書は、脳科学や心理学で「効果的」だと実証された子育て法を紹介する「入門書」のような一冊。


普段から育児や教育に関する情報をこまめに仕入れているという方には、さほど目新しい内容ではないかも知れないが、多くの情報に翻弄されたり圧倒されたりして困っている時などに読むと、気持ちをリセットできるのではないかと思った。


育児や教育に関することや、健康や美容に関することは、皆の関心が高いからなのか、昔から色々な人が情報発信している。もちろん、表現することは自由だが、以前にも増して発信も受受信も容易になった現代だからこそ、受信する側は注意深く、賢くなる必要がある。


また「科学的に正しい」ことでも子どもに合う、合わないはあるし、親の目で見極める必要があるという記述にやはり相性は重要なのだと再認識したが、「科学的に正しい」とされることも、時代と共に変わることもある。客観性を保ち、視野を広く持っていたいと思う。