#NetGalleyJP さんで読ませていただいた

『こども地政学──なぜ地政学が必要なのかがわかる本』

 船橋洋一 監修

 バウンド 

 カンゼン 2021315


平易な文章と丁寧な解説、図表などを用いた地政学の入門書。


 


・戦後、GHQによって日本では地政学の研究を禁止された。そのため欧米人に比べて『地政学』の視点に欠けるようになった。だからこそ、いまの日本人は地政学を知るべき。


・地理的条件に関係した政治的、軍事的な緊張の高まりを「地政学的リスク」というが、最近では特定の国、地域の政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりにより、世界の政治的、軍事的、社会的な先行きが不透明になることを「地政学的リスク」ということが多い。


・対して「カントリーリスク」とは、特定の国の政治、経済、社会の変化によって、主に経済的損失を被る可能性のことをいう。


・海洋国家(シーパワー)は足りない資源を貿易で得ようとし、大陸国家(ランドパワー)は侵略で得ようとする。両者は基本的な考え方が異なるため、対立することが多い。



・島国である日本は海洋国家(シーパワー)だが、かつては大陸に進出して大陸国家(ランドパワー)になることを目指していた。またランドパワー大国であるドイツやソ連は、シーパワー大国になることを目指した。しかしいずれも失敗に終わっている。


・歴史上シーパワー国家がランドパワーになろうとして成功した例は稀。両立しないといわれている。


・大国となり、一帯一路対策により、ランドパワーをシーパワーの両立を目指す中国の今後から目が離せない。


・地政学には「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」という考え方があるが、これはさまざま国が敵対したり友好関係を結んだりしながら、互いの勢力を均衡させて平和を維持しようという考え方のことで、バランスが崩れると戦争が起きるとされている。


・これまでアメリカは世界中に基地を置き、紛争に直接介入して来たが、現在は海外においた軍を引き上げたり縮小したりして、アジア、中東、ヨーロッパで起こる揉め事には直接介入せず、アメリカに協力する国にオフショアから協力する方式を取っている。その方が人やお金の負担を軽くできる利点がある。


・アメリカは日米地位協定によって、日本のどこにでも軍事基地を作ることができる。ロシアが北方領土を返還すれば、アメリカがロシアを牽制するために基地を作る可能性がある。ロシアはそれを回避したいと考えている。


・アメリカが日本に軍事施設を置くのは、地政学的に見てアメリカにとって日本は重要な位置にあるから。同じ理由から、アメリカを敵視する国が日本にある米軍基地を攻撃する可能性もある。

 

 


近年よく耳にするようになった「地政学」まずは子供向けに書かれたものからデビューを、とリクエストさせていただいた。


世界における日本の位置や立場、各国との関係などが、身近な人間関係を例に出したりしながら、平易な文章と図表を用いてわかりやすく説明されていて勉強になる。


シーパワー ランドパワー 

ハートランド リムランド

バランス・オブ・パワーとは

チョークポイントとは

地政学 地経学

サイバー攻撃 ファイブアイズ


などなど、用語の解説も丁寧で親切。


この本を読めば、地政学について「まるッとわる」という本ではないが、


「誰も戦争をしたくないはずなのに、どうして戦争はなくならないのだろう?」


「なぜ隣国同士は仲が悪いことが多いのだろう?」


など、さらに「考えてみよう」「調べてみよう」など、読み手の興味や学習意欲を掻き立てたり、考えさせたりするような語りかけがされていて、地政学上の重要人物の紹介もあり入門書としてとても良いと思う。子どもと一緒に読んだり、考えたりするのにも適していると思った。