#NetGallerJPさんで読ませていただいた、


『白ゆき紅ばら』

 寺地はるな

 光文社 2023228


『自分の人生を手に入れたい』


二度と帰らないと思っていたのに

行き場のない母子を守る「のばらのいえ」で育った主人公は、あるきっかけで、かつて逃げ出した場所に戻ることを決める。


 


「努力はただでできるけど、努力するための場所にたどりつくには、お金がかかる。」

-p. 28


「すこやかに育ってきた人は、話を聞いてもらえる人はすぐに『話し合わなきゃなにもはじまらない』なんて言い出すから、ほんとうに嫌だ。」

-p. 105



「あなたからは、もうなにひとつ受け取らない。わたしたちからは、もうなにひとつ奪えない。」

-p. 234


「誰かの人生に暗い影を落とすということ、それが罪でなくてなんだというのだろう。」

-p. 239


 


行き場のない女性と子供を受け入れる「のばらのいえ」、そこで起きていることは一見遠くの誰かの話のようだけれど、決してそうではない。


同様のことは、世界じゅうの至る所で起きているし、いつ我が身に降りかかるかわからない。


志道さんは序盤からずっと嫌い、美奈子さんも同じくらい嫌い。きみ香さんのことも「嫌だな」と思ったけれど、自分の中にも3人と同じようなところはたしかにあって、そのことに愕然とさせられる。


「わたしにはなにも返さなくていい」


と言った春日先生の行動と信念に胸が射抜かれたように感じた。


寺地先生の文章はいつもとても読みやすい。この作品も読みやすく、わかりやすく書かれているが、読み進むのがとにかく辛くて何度も休憩(逃避)した。


読んでいる間じゅう、大人としての私、親としての私、女性としての私、そして子供の頃の私、色々な私の心が悲鳴を上げ続けていたのだと思う。