『空にピース』

 藤岡瑤子

 幻冬社 2022224


「この学校では、何も、しないことです。」

「三年我慢すれば異動できるのです。」


「都内ワースト1の学力」、「児童の親の平均所得が都内の小学校では最も低い」という学校に着任した主人公が目にする厳しい現実。


 


「知らなくてできないことは、その都度教えればいいだけだ」

-p. 69


「子どもたちのいじめや不登校も、ある日突然始まるわけではない。必ず、いま思えばという場面がある。」

-p. 194


「見ようとしなければ見えないものが、この世にはある。自分はいままたその事実に気づかされている。」

-p. 200


「自分にもっと知識や能力があれば他にもなにかできたのかもしれない。」

-p. 244



「結局は親なのよ」

「子どもが変わろうとしても、親がそのタイミングで変われなければ、人生の軌道修正はそう簡単じゃないのよ」

-p. 288


「教育現場は縦社会だ。上に抗議するなら退職するくらいの覚悟がなければ難しい。」

-p. 319


 


多くのフォロワーさんが読まれていて、読みたい読みたいと思いつつ、読みそびれていた藤岡陽子さんの作品。


学級崩壊 、不登校 、貧困 、虐待 、ヤングケアラー、依存症 、性犯罪 、殺人事件 などなど、深刻な問題がこれでもかというほど盛り込まれていてるが、テンポ良く進むせいか、読みやすい文章のせいか、たちまちグッと引き込まれて、どんどん残りのページが減ってゆく。


さまざまな背景や問題のある子供や家庭が次々と登場するので、詰め込み過ぎという声もありそうだが、物語の舞台となっているような学校では、これが現実だと言われると頷いてしまう。


上司も同僚も無気力で、子供の方を向いているとは言えず、相談にも乗ってもらえないような現場で、主人公のように信念を貫いて頑張り続けることはどれほど困難なことだろう。


私はいわゆる#教育困難校 出身で、背後からバナナが飛んで来たとか、2階から水風船が落ちてきたとか、自転車が階段を下って来たとか、おそらくちょっと変わった(?)思い出が多いのだが、当時はただ迷惑な存在に思えた学友たちにもそれぞれ事情があったのだろうと今になって思う。


また当時は無力で無気力で「頼りにならない」存在に思えた先生たちにも生活があり、家族や大切な人があったのだろうと思うと、少し見える景色が変わってくるようだ。


小学生を育てている親の身としても、ひとりの大人としても、身につまされるところ、心に響くところが多い一冊、読めてよかった。