競争の番人』

 新川帆立

 講談社 202259


公正取引委員会の審査官の日常と非日常、市場を見張り、調査して不正を正す。



「怒るべきときに怒りをあらわにできないから、面倒ごとを押し付けられるのだと分かっていた。そういう甘さが自分の生活の隅々を侵している。」

-p. 169


「踏みつけてくる相手に対して、怒れなくなっているのだ。倒しようがない敵に直面したとき、大きな理不尽に見舞われたとき、誰かを憎んでも苦しいだけだ。恨む気持ちはない、自分が悪かったと考えたほうが楽なのだ。」


「自分の足で立って戦うのは辛い。優秀な指導者の差配のもと駒のように動くほうがよっぽど安楽だ。けれどもそれが、幸せといえるのだろうか。」

-p. 192


「私たち一人ひとりが、不十分でも弱くても、意思をもって動く。勝ったり負けたり、痛手を負ったり、経済全体としては効率が悪い方法かもしれない。けれども、人任せにしていてはいけない。」



「一人ひとりの挑戦と試行錯誤が積み重なって、経済が回り、社会がつくられる。そのプロセスこそが競争であり、私たち、公取委は競争を守る番人なのだ。」

-pp. 253-254


「悪い奴らは何でもアリで攻めてくる。けれども正義の側は、曲がった手段を使うことができない。あくまで法令を遵守して戦わなくてはならない。」

-p. 325



ドラマで見て面白かったので図書館で予約していたが、原作も面白い。


カルテル、談合、下請けいじめ、同業者締め出しなどが取り上げられているが、談合など、明らかに不正だと広く知られていることもあれば、知識不足、勉強不足のために、当事者が不正だと気付かずに始めたものや、慣例として続いているようなこともあるのではないかと思う。


架空のお話だとは知りつつも、個性的で魅力的なメンバーを通して公正取引委員会という馴染みのない官庁が一気に身近に感じられた一冊、シリーズ第2弾も図書館で予約しているので、回ってくるのが楽しみだ