丸山先生の10冊目の単行本
#NetGallaley さんで発売前に読ませていただいた
『キッズ・アー・オールライト』 丸山正樹
(朝日新聞出版社 2022年9月7日発売)
大人の都合、社会の都合で「今」を「未来」を「将来」を奪われている子どもたち。
あなたにも、彼らが見えていますか──。
「いくら流暢なニホン語が話せても、『見た目が違う』子は恰好のいじめの餌食になる──。」
-p. 88
『性的被害は、売春行為のようにあたかも女性が主体的に行っているように見えるものでも同様に起こります。そういう場面で何か危険な目に遭うと『自己責任』とか『自業自得』とかいう人がいますが、結局それも弱い立場の女性が男性に利用されているにすぎません。そもそも我が国では、社会的に、経済的に、圧倒的に男性優位の社会です。そこに問題の根源があるという現実を見つめる必要があります。』
-p. 107
「子供は、誰かへの『責任』なんて考えなくていい。
自分のことだけを、自分が毎日をどうやって楽しく過ごせるかだけを考えて生きていればいい。
それを許されている生き物を『子供』と呼ぶのだ。」
-p. 162
『ヤングケアラーは、それまでケアにかかりきりで、自分は何が好きで、何が得意なのか、自分のことを全く知らなかった、というケースが多い』
-p. 200
「在留外国人の子供たちは、幼い頃から日本語があまり得意ではない親の通訳をしたり、買い物などの雑事を担ったりしていたケースが多い。仕事にあぶれた親に代わって働き、家計を助けている者もいる。彼らもまた、ヤングケアラーなのだ。」
-p. 223
「問題なのは、自分たち大人の方なのだ──。」
-p. 263
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日系ブラジル人、ヤングケアラー、ストリートチルドレン、貧困、半グレ、パパ活など、現代社会が抱える問題が盛りだくさんなのにゴチャッとせずに、情報が過不足なく収まるべきところに収められているという感じがして、とても読みやすかった。
『デフ・ヴォイス』シリーズも愛読しているが、
丸山先生のお書きになる物語は、普段の生活では見えないもの、見ようとして来なかったもの、視界に入っても分からなかったもの、分かったつもりになっていたもの、そういった事柄にしっかりと目を向けさせてくれ、新たな知識を得たり考えを深めたりする機会を与えてくれる。
そして情緒的過ぎるということもなければ、説明的になり過ぎることもなく、教訓めいてもいない。それでいてメッセージが弱まることもなく、心の深いところまで染み通る。
知らないもの=ないもの
と自動的に思ってしまう自分は、もうこの辺で捨ててゆきたい。