S・A・コルビー◇頬に哀しみを刻め◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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殺された息子の仇を討つべく、父親がバディを組む! 暴力は暴力で、血を流すことも厭わずーーー






◇頬に哀しみを刻め◇ -Razorblade Tears-

S・A・コルビー 加賀山卓郎 役



殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。



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堅実な庭園管理会社の経営者アイクは朝早くから警官を迎え入れ、嫌な予感を覚える。そしてそれは当たった。息子アイザイアが殺されたのだ。夫のデリクと共に、卵子提供で生まれた娘アリアンナを遺して。



アイザイアは同性愛者だった。彼は大学卒業後にカミングアウトしたがアイクの方がそれを受け入れることが出来ず、決別してしまったのだ。アイクもデリクの父親バディ・リーも今でもアイザイアの考えを受け入れるのは難しいが、その死はやはり耐えられない辛いものだ。



2ヶ月経っても2人を殺した犯人は挙がらず、手掛かりも見つからない。バディ・リーはアイクに一緒に犯人探しを持ちかける。だが刑務所から出て来た後、地道に更正の道を歩いて来たアイクには危ない橋だ。最初は断ったが、直後、2人の墓が破壊されたと聞き、バディ・リーの話に乗る。



アイザイアはジャーナリスト。何か危険な話を公表しようとしていたことが2人が暮らしていた部屋からは窺い知れた。怯えた女の声、謎のギャンググループ。生きていた頃は息子を拒絶していた父親たちが葛藤と血と暴力の果てに掴んだ真実と救いとはーーー



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「頬に哀しみを刻め」です(・∀・)

2024年度『このミステリーがすごい!』海外編第1位に輝いた犯罪小説です。前科持ちの黒人とのんだくれの白人が息子を殺した犯人を突き止めるという今時の犯罪小説です。



しつこいほど連呼するのは主人公2人はそのために殺人も銃撃も武器の所持といった犯罪行為も辞さないからです。どんなに血に塗れても報復が無慈悲な暴力であっても必ず息子を殺した犯人を突き止めて殺すーーー正義や法律よりも大事な譲れないものがある、という強い意志を感じて応援したくなります。

……話逸れますが、ニュースを見るより小説読む方がその国の現実が分かるなぁ、と思います。事実自分は北欧ミステリーを読んで「世界一幸福な国〜」のキャッチコピーを信じなくなった。



それに同性愛、同性婚が絡むことで21世紀、それも2020年代ならではの現代犯罪小説に仕上がっています。自分の子どもが同性と恋に落ち、あまつさえ卵子提供で子どもも作っていたらーーーアイクやバディ・リーで無くても度肝を抜かれてしまいますね……人種問題と相まって偏見も誤解も強い。けれど親なら本当なら……それに対する後悔が先に行った「譲れないものを守り通す」意志を強くしています。

そもそも子どもを亡くした親の姿というのは時代や国や人を問わず、全て哀しいものです。その分孫娘のアリアンナの為に奮闘奔走する2人の祖父の姿は本当に胸を打ちます。……よかった、ものすごい暴力! 血! 暴力! 血! みたいな話だから最悪の結末に至ったらどうしよう!! と思っていたので←



「頬に哀しみを刻め」でした(・∀・)/ 

嘘は真に!? 本物の武器を作る羽目に……(*^o^*)/