とある屋敷に隠れ潜む、大いなる影と闇の一族の物語。それを紡ぐは唯一の「普通の」男の子ーーー
◇塵よりよみがえり◇ -From the Dust Returned-
レイ・ブラッドベリ 中村融 訳
小高い丘に建つ一軒の屋敷。住む者は、ミイラのおばあちゃん、心を自由に飛ばす魔女セシー、鏡に映らない夫婦、たったひとりの人間の子ティモシー。いまここで、魔力をもつ一族の集会がはじまる。そして、何かが変わる日もまた近い…ファンタジーの巨匠が五十五年の歳月をかけて完成させた、とても特別な物語。
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「塵よりよみがえり」です(・∀・)
さて、ブラッドベリの短篇集には時々心を飛ばしては人間は勿論、あらゆる自然万物に乗り移ることが出来る女性セシーとその仲間、というか一族が登場する話が載ります。翼を持ったおじさんとは不思議な乗客の男とか。彼らの不思議でナンセンスなお話がシリーズとして1冊になったのが本書です。
イリノイ州のとある大きなお屋敷で暮らすのは永遠とも言える長い時を生きる一族たち。ミイラのおばあちゃん、決して眠らず鏡に映らない夫婦、墓から生まれて年月を経るごとに若返る女性……まさに私たちがファンタジーやゴシックホラーで親しんで来た不思議な存在たち! そこに「普通の」少年ティモシー。彼は何も出来ませんが一族と同じように生きたいと望み、物事を記憶する頭を持っています。
しかし彼らの存在は人間たちが闇夜を恐れなくなり、空をも征服し始めた頃、はみ出しものの存在によって危うくなり……ティモシーがその未来を選ぶのは、まるで私たちがファンタジー世界やその存在を「私たちは永遠にそれになれない、本当に、本当に違うもの」と受け入れて大人になっていく様子と似ている。永遠に生きる一族たちはとある代償を払いました。ティモシーは「普通」なのでその代償を払っていません。この小説は影の国の住人たちに敬意を払うと同時に限りある生の中であらゆる幸福を身を浸すことが出来る人間にも敬意を払っているのです。
下手な人間讃歌よりもこういうの読みたいよ。
「塵よりよみがえり」でした(・∀・)/
久しぶりのウールリッチ(*^o^*)/