川上弘美 No.24◇某◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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誰にでもなれる、故に"誰でもない"。所以を持たない"某"。彼女の、又は彼の生きる末はーーー

 

 

 

 

 

◇某◇

川上弘美

 

 

ある日突然この世に現れた某。
人間そっくりの形をしており、男女どちらにでも擬態できる。
お金もなく身分証明もないため、生きていくすべがなく途方にくれるが、病院に入院し治療の一環として人間になりすまし生活することを決める。
絵を描くのが好きな高校一年生の女の子、性欲旺盛な男子高校生、生真面目な教職員と次々と姿を変えていき、「人間」として生きることに少し自信がついた某は、病院を脱走、自立して生きることにする。
大切な人を喪い、愛を知り、そして出会った仲間たち――。
ヘンテコな生き物「某」を通して見えてくるのは、滑稽な人間たちの哀しみと愛おしさ。
人生に幸せを運ぶ破格の長編小説。

 

 

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「某」です(・∀・)

 

 

人間そっくりだけどある日突然現れる、父母を必要としない、老若男女の何にでもなれる"某"。まるでS・レムの小説に出て来そうな不思議な生命体の話です。

 

 

いきなり(一見)完成形としてこの世に現れ、変化したい時に変化出来る。読みながら「分人」を思い出しましたがそれ以前の問題だった。だって「誰でもない」んだから。

誰にでもなれる、ということは個や自我がないという点で誰にもなれない、しかもその概念がないから学ばない限り永遠にそのまま、なんだなぁ、と思いながら読みました。

 

 

"某"は高校生として、または教師として、日雇い労働者として変化しながら同じ"某"と関わり、彼らと関わる中で人間を知り、心を知り、やがては自分を知っていきます。その"某"の最後の変化とその前後の出来事は生命体ならではの、究極の悟りだと思います。そう考えると死は誰かを誰かたらしめること、誰かが誰がであることはいつか終わりがやって来ることなどと思ったり……そしてそれに気が付いた時、"某"は限りなく、いやもう人間そのものになったと思います。

 

 

「某」でした(・∀・)/

アメリカのどこかでひっそりと生きるファミリー。けれどそのファミリーは……(*^o^*)/