アンナ・ツィマ◇シブヤで目覚めて◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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シブヤに長く留まってしまったその"思い"が亡くなった作家とヤナと巡り合わせるーーー

 

 

 

 

 

◇シブヤで目覚めて◇ -Probudím Se Na Šibuji-

アンナ・ツィマ 阿部賢一・須藤輝彦 訳

 

 

チェコで日本文学を学ぶヤナは、謎の日本人作家の研究に夢中。一方その頃ヤナの「分身」は渋谷をさまよい歩いていて──。プラハと東京が重なり合う、新世代幻想ジャパネスク小説!

 

 

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村上春樹で日本語に興味を持ち、三船敏郎で日本そのものを好きになり、17歳の時日本に旅行したヤナはプラハの大学で日本語を勉強している。2年生になると図書室で日本語図書を扱う仕事を始め、そこで「川下清丸」を知る。ただ短命の為、情報も作品はほとんど無く、手に入ったのは短篇『恋人』だけ。ヤナは知りあったヴィクトル・クリーマの協力も得て清丸の情報入手と翻訳を試みる。

 

 

2010年、ヤナは1人で渋谷にいた。だけどそれより前の記憶が無い。バーラは? 連絡をしなきゃ。しかし出来ない。人に助けを求めることも出来ない。そして気づく。誰もヤナのことが見えていないこと、渋谷から出られないことをーーー

 

 

「プラハのヤナ」はクリーマに恋心を覚え、窓に惹かれる、友人雅知子の兄で写真家アキラと知り合う。一方「渋谷のヤナ」は日本語を学び、バンドマンの仲代を助ける体験を経て、日本留学を果たしたクリーマと出逢うーーー

 

 

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「シブヤで目覚めて」です(・∀・)

巷で見かけてちょっと気になった本です。開いて知りましたがはじめてのチェコ文学でした。チャペックからいけるかな、と思ったのに笑

 

 

チェコ文学というとチャペックのイメージが強かったので「レムのように社会批判で暗いのかな〜……」と思っていましたが「日本大好き!」で文学沼に落ちちゃった女子大生があまりの想いの強さで分離して渋谷を彷徨い歩いた挙句、奇跡を起こす、という現代的でポップな小説でした。アニメや漫画で沼った外国人は多いですが文学で沼るとは結構硬派タイプです。しかもマニアック……でも良いよな、何から好きになったって。それがなんであれその人の人生を輝かせるならそれだけで沼った人間の勝ちよ。

しかも日本への想いが凄すぎて"想い"だけが渋谷に止まるなんてどんな究極。終盤、「渋谷のヤナ」がクリーマやカメラマンの仲代に出逢うところは誤差があって「君の名は」みたいだなと思ったり。

 

 

 

さてさてそんなヤナの研究対象、というか沼対象は川下清丸。ほうほう、大正作家であの「新感覚派」と親交があったのか。どれ、もっと知りたいから検索を……ってお前もかよ! 

これ以上はネタバレになるので一言。私は、はじめて聞く作家の名前をGoogleとかで調べたくなるこの現象をジュリアン・バトラー現象と名付けたい。出版社同じだし!!

 

 

川下清丸の短編「恋人」は自伝的要素を持った、とある文豪の醜聞を100倍悲惨にした話です。ごめん、これはちょっと書けない……これを読んでこいつほど結婚向いてねぇ人間もいない、誰も幸せに出来ないなら結婚するなよ、と言いたくなったのですが、ふと思ったことが……

 

 

もしかしたら清丸はこの「恋人」を希望通り『文藝春秋』に載せられたら新しい人生を生き直すつもりだったのかも知れない、と。しかし菊池寛はそれを許さなかったことから清丸は永遠に自分が許されないような気がして同じように後追いのように川に身投げした……もし『文藝春秋』に載せられたら夫は……という思いから夫人は全部の遺品を処分したんじゃ無いかと……最後のヤナとの出来事は作家清丸を見つけてくれた彼女に対する贈り物と勝利宣言、そして生きている時には叶わなかった決別の徴だったと……でもこれも憶測なんですよね。完全な答えを知っているのは本人だけでその本人は何も語ることなくいなくなってしまった。やっぱもやるな〜……ハーゲンダッツじゃ足りなかったかも知れん……

 

 

「シブヤで目覚めて」でした(・∀・)/

次は米国人にとって特別な季節がやって来る!(*^o^*)/