言葉を探す者、探される者、その二者を見守る者たちが出会い集う時、語られる「言葉」と「存在」が在るーーー
◇地球にちりばめられて◇
多和田葉子
留学中に故郷の島国が消滅してしまった女性Hirukoは、ヨーロッパ大陸で生き抜くため、独自の言語〈パンスカ〉をつくり出した。Hirukoはテレビ番組に出演したことがきっかけで、言語学を研究する青年クヌートと出会う。彼女はクヌートと共に、この世界のどこかにいるはずの、自分と同じ母語を話す者を捜す旅に出る――。
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「地球にちりばめられて」です(・∀・)
この人の作品はいつも日常世界がそこから垣間見える非日常世界が舞台ですが、本書は「ある日国が消滅してしまった」という点で100%非日常世界に作り替えられてしまった香りがします。政情不安ではいきなり国は消えたりしないので、恐らく……この作品はもしかしたら「献灯使」と同じ世界線の話なのかも?
主人公、Hirukoは故郷の国が消滅し、独自の言葉〈パンスカ〉を創造する一方でHirukoの故郷の言葉を話す人を切実に探しています。彼女の中心に言語学を学ぶ青年、偶然出会ったインド人の青年、鮨職人のエスキモー、その恋人ポジションな女性……が出会い、言葉を交わし合い、Hirukoの母語を探すうちにいつのまにかそれを通り越して1つのコミュニティを作っていきます。
そこに差別や偏見は無い、あったとしても言葉を交わすことで破壊され新しい発見を見出せる、国境を容易く越えられる一行。国境を越えられる、というのは21世紀ではものすごく重要で、ものすごく大切なことです。コロナコロナコロナ……で疑心暗鬼に溢れかえった現在なら尚更。
最後は旅物語の更なる続きを仄めかしてくれます。事実、続編があるのでその文庫化を楽しみに待っていようと思います。地球に点々と散らばって集まった一行は地球という星に何を教えられるのでしょうか?
「地球にちりばめられて」でした(・∀・)/
次は新たな探偵が登場!?(*^o^*)/