ジョルジュ・シムノン No.130◇メグレとひとりぼっちの男◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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おおよそルンペンらしくないその男は20年前に女の為に出奔した……

 

 

 

 

◇メグレとひとりぼっちの男◇ -Maigret et L'homme Tout Seul-

ジョルジュ・シムノン 野中雁 訳

 

 

パリの中央市場が郊外に移転する前の出来事。市場に近い廃屋でルンペンの死体が発見された。胸と腹に三発の銃弾を受けていた。手入れの行き届いていた頭髪と髭、清潔な手。ぼろの着衣をのぞけば、ルンペンらしいところはどこにもない。「まるでルンペン役を演じている老俳優だな」とメグレはつぶやいた。男の身ぎれいさの謎はまもなく解けた。付近の理容学校で定期的に練習台になっていたのだ。新聞で写真が公開され、男は20年前に妻子を捨てて蒸発した職人だと判明した。だが、殺しそのものに関しては、まるで手がかりが掴めない……。

 

 

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警察官も休暇を取るぐらい暇で平和な8月のある日、メグレは1本の電話を受け取った。中央市場近くの小路にある廃屋でルンペンの死体が見つかったのだ。まぁ、それ自体は珍しいことでは無い。問題はそのルンペンそのものだ。髪や髭は定期的に整えているようだし、手も綺麗だ。おおよそルンペンらしくないのだ。そもそもルンペンが拳銃で殺されること自体そうあるものでは無い。これは計画的な犯行に違いなかった。

 

 

写真を新聞に載せてやっと身元が分かった。理容学校で定期的に練習台になっていたそのルンペンは20年前、若い女と一緒に居るところを一時かなり目撃されていた。ルンペンことヴィヴィアンはこの女の為に家庭を捨てたのだ。前触れもなく見かけなくなったのはその女、ニーナ・ラサーヴが何者かに殺されたからだ……

 

 

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「メグレとひとりぼっちの男」です(・∀・)

超久しぶりのメグレ警視です。最後に読んだのは6月でした。ぎょえー。もう5ヶ月も経っていたとは……もうすぐシムノン作品も読破に近づいています。今年中には別れを告げてしまうでしょう。

 

 

お久なメグレは芯からひとりぼっちの男と向き合います。腕の良い職人で堅実な家庭も築いたけれど妻では心は満たされず、他の女と生きる為に出奔するもその女も失って人生の果ては殺害体になって……死体になってしまったので孤独感の描写が薄いのが残念ですがこのヴィヴィアンを主人公にしたら面白かったと思う。家庭では満たされない、他の場所を新天地に定めるもそれにも裏切られる……その寂寥感と虚しさは群を抜くと思います。同時に2つの事件の殺人犯の心中もーーークリスティー風に言うならーーーゼロ時間に至るまでの道筋と人生を描いたらこの物語はもっと重厚なものになったと思います。シリーズものはこう言う時、結構残念だな……と思う。

 

 

「メグレとひとりぼっちの男」でした(・∀・)/ 

次は牛が殺人現場を目撃する!?(*^o^*)/