人類と『人類が内面的に受容できない何ものか』の接触は叶えられるのか?
◇大失敗◇ -Fiasko-
スタニスワフ・レム 久山宏一 訳
土星の衛星タイタンにおける救出任務の最中に遭難した宇宙飛行士パルヴィスは、自らをガラス固化して22世紀に蘇生する。地球外知的生命体探査に旅立つ宇宙船エウリディケ号に乗り込んだ彼は、最先端の自然科学者やカトリックの神父らとともに、知的生命体が存在する可能性のある惑星クウィンタを目指す。やがて、光を超える旅の彼方に彼らが見たものは、地球とは別種の進化を遂げた文明の姿だった。不可避の大失敗を予感させつつ、文明の「未来」を思考したレム最後の神話的長篇。
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パルヴィスは土星のタイタンに赴き、2人の操縦士、そして彼らを救出に向かったかのピルクス船長の捜索と救出に志願する。向かった先は「バーナムの森」と呼ばれる結晶の森。ところがそこで他の仲間たちと離れてしまった上に結晶の崩壊に呑み込まれ、もう救出の見込みがないことを察知したパルヴィスは無我夢中で自らをガラス固化しようと図る……
一方、22世紀のタイタンでは知的生命体の痕跡が認められる惑星クウィンタの探索計画が進められていた。捜査団はあの「バーナムの森」を取り払う際にガラス固化された死体を見つけ、蘇生にかかる。結果、1人だけ蘇生に成功する。しかしPで始まる名前であること以外は何も分からない……結局は彼は「マルコ・テムペ」という新しい名前と人生を与えられ、エウリディケ号の乗組員としてクウィンタ探索に赴くことになった。
しかし惑星クウィンタは観測すればするほど分からないことだらけ。テムペたちはヘルメス号でクウィンタに近づくがそこで出会したのは稼働の目的が分からない人工衛星と大規模な建造物……クウィンタ人は一体どこに行ったのか? 彼らの意図は? 惑星クウィンタは侵入者と見做し宇宙船を攻撃し、ヘルメス号は接触か否かを迫られるが、事態はどんどん「大失敗」の方向へ……
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「大失敗」です(・∀・)
実にお久のレム氏です← しかし当初は「やっとレム以外が読めるわー」と安堵しても日に日にレムが懐かしくなるのだから不思議です←
さて本書は「ソラリス」と同様地球外知的生命体との邂逅と接触がテーマです。しかし過去作と違いバッドエンドの匂いがぷんぷんします。というかもう題名からしてアレですよね。事実地球側はもう決定的に判断を誤ってしまう。地球外知的生命体との出会いは決してハッピーエンドを齎さない。
レム氏は無神論者だったと言いますが、本作では神話が登場し、探索員の中にはアラゴ、という神父さんがいます。SFに宗教を持ち込むのは随分変わっていますが←、結局アラゴ神父の言葉が正しかったという皮肉な伏線が有ります。そしてクウィンタとの接触を計れば計るほど乗組員たちが感情に振り回され、破滅を示唆させる結末に行き着くところは当時、つまり1986年の世界情勢、そして21世紀に対するメタファーのように思えます。
アシモフ、クラーク、ハインラインからSFに入ったわたしなのでレム氏の悲観的警鐘的な地球外知的生命体の接触は結構ショックでした。しかしもとより宇宙は人類だけのものでは無い、という事実を認知出来ただけでもきっと読む価値が有った。
本書がレムの最後の小説になります。しーかーしまたレム作品の初訳作品が出るということで一旦ここでストップし、出たらその都度読むという形に切り替えます。次なるSF作家をどうぞお楽しみに!
「大失敗」でした(・∀・)/
久しぶりの、そして読破間近のシームーノーン(*^o^*)/