ノルウェーの英雄の殺害と森の中で見つかった白骨死体を繋げる闇とは?
◇最後の巡礼者・上◇ -Den Siste Pilegrimen-
ガード・スヴェン 田口俊樹 訳
2003年6月8日、第二次世界大戦の英雄カール・オスカー・クローグの死体が自宅で発見された。ノルウェー貿易相まで登り詰めた老人は鳥のくちばしにつつかれたように切り刻まれ、犯人に強い殺意があったのは明らかだ。だが、手掛かりは凶器——ナチスの鉤十字が刻まれたナイフしかない。警察本部では犯人像を見いだせず、捜査は行き詰まってしまう。そんな中、トミー・バーグマン刑事は2週間前に発見された3体の白骨死体との関連性を見出す。戦時中に殺された三人は、親ナチ派のノルウェー人実業家グスタフ・ランデの娘のセシリア、婚約者のアグネス・ガーナーとメイドだった。彼女たちはグスタフの近親者ゆえにクローグらレジスタンスの標的にされ、粛清された三人の縁者が復讐のためにクローグを殺した。そう推理したバーグマンは、60余年前の事件の真相に挑む決意を固める。1939年8月、アグネス・ガーナーは自らの手で愛犬を殺した。それがイギリス諜報部の最後の試験だったからだ。どうしてこんなことができるのか、自分でもわからない。確かなことは、ナチスを倒さねばならないということだけだ。その決意を胸にアグネスは故郷ノルウェーへ帰還する。人生を狂わせる運命の出会いが待ち構えていることも知らずに……。
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5月16日、オスロのノールマルカの森で3体の白骨死体が見つかった。かなり古いもので2人の大人が殺害されたことは一目瞭然だった。手がかりは『グスタフ』と名前が彫られた結婚指輪1つだけで身元捜査は難航するが、トミー・バーグマン刑事は1度に3人が行方不明になった、という事実から身元を割り出す。『グスタフ』とはグスタフ・ランデ。かつてのノルウェー実業家で新ナチ派だった。……白骨死体の3人、ランデの娘セシリア、婚約者アグネス、メイドのヨハンネは身内ゆえに『粛清』対象になった?
6月8日。第二次世界大戦でノルウェーの英雄と謳われたカール・オスカー・グローグが惨殺死体で見つかる。使われた武器はヒトラー・ユーゲントのナイフ。この事件には大戦が関わっている? トミーは先の3人の白骨死体とグローグが繋がっていると見て捜査を開始する。立ちはだかるのはカイ・ホルトという名前のスパイの謎の"自殺"だった。
1939年。アグネス・ガーナーは愛犬を射殺し、英国諜報部の試験にパスした。任務はナチス幹部の愛人になって情報を手に入れることだ。果たしてノルウェーに帰国したアグネスを待っていたのは……
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「最後の巡礼者・上」です(・∀・)
これを読まないで北欧ミステリ・デンマーク編に突入するところでした。危なーい←
本書は警察小説+歴史小説です。ノルウェーでは長年タブーと見られがちだった「ノルウェーとドイツの関係」、「ノルウェー内のナチスとレジスタンス」に深く切り込みます。そしてそれが現代(2003年)に繋がるところは非常に凝っています。いや、もうこれ、警察小説+歴史ミステリーものの傑作だと思います。1939年〜1945年と舞台が過去軸になる場面は緊迫感と当時の雰囲気が伝わって来ます。というか作者、ノルウェー国防省の役人なんですね! 専門家じゃん! か、勝てん……!!
現代の主人公はトミー。どうやらDV気質をコントロールできないやっぱり←破滅型の人間。趣味なのかハンドボールチームのコーチをしていて、そこに所属している生徒の母親に片想い中。彼女は理解してくれると良いね……
過去軸の主人公はアグネス。ノルウェー人ですが、英国諜報部のスパイとしてドイツに接近中。どうして彼女があんなひどい運命に? だって始末したのは彼でしょ!? 同じ仲間で、1番信頼し合っていた筈なのに……しかし本当に彼が彼女たちを殺したのでしょうか。
衝撃的なセリフを反芻させながら下巻に行きたいと思います(*^o^*)/