常に「かかとのない」文学を、言葉は常に変身変幻するーーー
◇かかとを失くして・三人関係・文字移植◇
多和田葉子
九時十七分着の夜行列車で中央駅のホームへ降りた、遠い国から来た私。なぜか周囲からかかとを笑われながら、書類結婚をした男の住む十七番地のアパートで、扉に隠れて姿を見せない夫との奇妙な生活が始まる。ドイツで作品を発表していた著者が、群像新人賞を受賞して日本で衝撃的デビューを飾った「かかとを失くして」他二篇。“21世紀の世界文学”の幕開けを告げる、記念碑的作品集。
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1.かかとを失くして
2.三人関係
3.文字移植
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「かかとを失くして・三人関係・文字移植」です。
1はドイツで先に執筆していた彼女の、日本デビュー作です。「犬婿入り」と同じ香りを漂わせた奇妙な奇妙な夫婦生活のお話。最初はこれ、「偽装結婚」だったんですね。変えるにあたり、意見を述べるのですが多和田葉子女史しかこんな理由を挙げないだろうと思いましたね。
彼女はドイツでの活動歴の方が長いんですね。世界の純文学とはこういうものを求めるのか、と身震い。彼女が影響を受けた世界文学を読んでみたい。やはり筆頭はカフカだろうなぁ。「変身」ぐらいしかまともに知らん……
2は「三角関係」では無いが、「三人」の恋愛「関係」を、綾子なる女性の話を聞いてわたしが自分で作ってしまう不思議な恋愛の話。終始わたしの危うさが見えて「かかとを失くして転んでしまいそう」なところが有ります。
3は南の島の翻訳家の話。翻訳とは言葉の一種の変身なのかも知れないと思わせる一作。作中の訳文と聖ゲオルグの話はアンネ・ドゥーデンの「Der Wunde Punkt im Alphabet」からで英国でドイツ語文学を発表しているそうな。多和田葉子女史と一緒ですね。この話はドイツ語を知っていた方が楽しいので興味があればドイツ語を勉強してみるのも一興かも。あー、言葉って奥が深い! 純文学は話に凝らない分、文章そのものの味が存分に楽しめて癖になる! いやー7年前はそんなこと全く考えられなかったのに!
そんなわけで次も多和田葉子です! うぇい!(*^o^*)/