「大災厄」以後、世界は日本は動物は人間は、そして言葉はどんな形をしているーーー?
◇献灯使◇
多和田葉子
大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康だが子どもは学校に通う体力もない。義郎は身体が弱い曾孫の無名が心配でならない。無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。大きな反響を呼んだ表題作のほか、震災後文学の頂点とも言える全5編を収録。
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1.献灯使
2.韋駄天どこまでも
3.不死の島
4.彼岸
5.動物たちのバベル
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「献灯使」です(・∀・)
この物語は多和田葉子流ディストピア小説です。老人はいつまでも元気だけど子どもはとてもひ弱だったり、日本が異文化交流を亡くして江戸時代の鎖国よりも鎖国化したり、原子力発電事故以後日本のものが全世界で警戒されたり、人間が滅亡した世界で動物たちが対話をしたり……という薄ら寒くなる5篇です。書かれたのは2014年なので本当に2011年のあの日を受けて書いたものです。コロナコロナコロナ……以前の生活にも戻れない私たちは、もう2011年の3月11日以前にも戻れない。本当に……本当に暗い。あれかもうすぐら10年、本当に変わったのか、それとも何も変わっていないのか、コロナも抱えて世界は日本は何処へ転がろうとしているのか。
ここまで上げれば普通のディストピア小説ですが、多和田葉子はそれに十八番の、言葉を変幻を行なっています。鎖国により言葉が本来の意味を無くして別の言葉の、別の世界の言語になる。1の「献灯使」は「遣唐使」の亜流ですが、「若い」ひ弱な無名が「老人」で元気な義郎ですらやったことのない外国に行く運命を背負うのはまるで震災復興の祈りのようで震災文学の白眉だと思う。それにしても大災厄以後に生まれた子どもがとてつもなく脆弱というのは本当になんとも言えない冷えた怖さがあります……若い、幼いを悲観的に捉えたのは初めてだ……
5は人間のような、動物のようなものたちの会話。この設定は新潮社から出ている「雪の練習生」と同じですね。こんなディストピアじゃないけどとある漫画を思い出しました。
「献灯使」でした(・∀・)/
次は〜……実はここまで読んでいたのにデビュー作、読んでなかったんだよなぁ← (*^o^*)/