ジョルジュ・シムノン No.117◇メグレとワイン商◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

強欲なワイン商を撃った犯人は?

 
 

 
◇メグレとワイン商◇ -Maigret et Le Marchand de Vin-
ジョルジュ・シムノン 飯田浩三 訳
 
 
ワインの豪商オスカール・シャビュは、若い秘書との逢引を終えて高級同伴ホテルを出たところを、何者かに射殺された。一代で富を築いた成り上り者、その上漁色家とあれば、恨みを持つ男は無数にいる。会社の使用人、交友関係についての常道の捜査が進められた。だが決定的な容疑者は浮かんでこない。そんな折、オルフェーヴル海岸の近くで出合った男がメグレの注意をひいた。めくと視線が交錯した瞬間、男は立ち去ったが、男の目は何かを伝えようとしていた。その直後に匿名の電話もメグレは気になった。ーーー《シャビュは卑劣な悪党でした》……。
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
よくある強盗事件の聴取をしているところに17区のフォルチュニ通りで人が殺されたと通報があった。17区は富裕層が多く住む界隈で犯罪が起こるような場所では無い。早速現場に急行する。
 
 
殺されたオスカール・シャビュはワイン商。それも豪商の類だ。そのシャビュは、意味ありげな同伴ホテルから出て車に乗り込むところを殺されたらしい。果たして直前まで彼は若い秘書アンヌ・マリーと一緒に居た……シャビュは女とあれば手に入れずには気が済まない、目下の物は見下して征服せずにはいられない典型的な成り上り者だったのだ。
 
 
メグレはさぞ恨んでいる男はいっぱいいるだろうと捜査を進めるが、確かに出るわ出るわだが決定的な証拠を持つ者は出てこない。そんな中みすぼらしい格好の男がメグレに訴えたいように見つめていることに気がつく……そして電話……果たして相手は同一人物だろうか? 風邪かも悩まされるまぐれだが、アンヌ・マリーのとある一言から突破口を得る……
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
「メグレとワイン商」です(・∀・)
最近はとかくエンターテイメント的な始まり方をしていましたが、今回は部下から連絡を受けて現場に向かうオーソドックスもの。原点に帰った?← また被害者像もまぁ殺されてもおかしくない男です← 成功者で強欲ってフランスじゃ勝ち組なの、ねぇ? シムノン作品はどれもそうですが、事件の関係者は皆、悪人とか善人だとか純真とか矮小とか卑怯とか全てがごっちゃに入っていますね。シャビュもその夫人も愛人も一言で括ることが出来ない。見ていて味わうと頭がくらくらする。
 
 
さて此処でも犯人がメグレに接触します。メグレシリーズは本当に同情してしまうところが何もない、悪寒が走る恐ろしい犯罪者! というタイプが多かったのですが、最近はシムノン・ノンシリーズのような虚しさと虚無と孤独を抱えた犯罪者が目立って来ました。誰にも気に留められない理解されない哀れな枯葉一様な犯罪者……現代の孤立社会を思い出させて身につまされます……今回被害者が人間性は屑なのに成功者なので余計に犯人が哀れというか……
 
 
「メグレとワイン商」でした(・∀・)/ 
えー、此処でいったん、読者の輪を通常から特別枠に切り替えて多和田葉子や同じフランス人でお久なあの方を読んだりします!(*^o^*)/