ジョルジュ・シムノン No.107◇小犬を連れた男◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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子犬を傍らに、ノートを書く男の真意とは?

 
 

 
◇小犬を連れた男◇ -L'hamme au Petit Chien-
ジョルジュ・シムノン 長島良三 訳
 
 
刑期を終え出所して以来自殺願望に取り憑かれているフェリックス・アラールは、小犬のビブを唯一の友としてパリの質素なアパートに暮らしている。彼は自らの込み入ったそれまでの人生を、丹念に記述しはじめる。華やかな若い時代、複雑な女性関係、突然の謎めいた転落…。その過程で新たな疑惑と苦悩が心に兆してくる。夜の散歩、小犬のビブの愛らしさ、主人公の孤独と狂気。そして悲劇が訪れる。犬好きだったシムノンが唯一犬を登場させた名作。
 
 
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書店の店員として働くフェリックス・アラールは妻とも別れて小型のプードル、ビブと1人と1匹暮らし。彼にはとある前科があった。彼は青色と黄色のノートに自殺願望や自らの人生を振り返った文章を書き綴る。「魔女」と呼ぶ老女の店長は次第に彼の最期が近づくのを悟る。再度の警察出頭、そして「その時」に至るまでに登場する人間たちを書き記したアラールは何故殺人を犯したのか、自分は誰を愛していたのかーーー妻のアンヌ=マリーか彼女の友人モニクか?ーーー考える。傍らにプードル、ビブを置いて……
 
 
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「小犬を連れた男」です(・∀・)
 
 
シムノンは犬が好きだったそうですが、私情を挟まない主義だったのか←その犬が出てくる作品は100作以上も書いていてたった1作しか無く、それが本書です。物語で動物が出て来ると大体キーパーソンになりますが、本書もそうです。
 
 
本書はとある事件で罪禍を背負った男が出所して以来、死の影を誘っては死へ赴く前に人生を振り返る話です。過去と現在が入り組み合うのはシムノン作品の特徴ですが、合間合間にアラールという男の哀愁や虚しさを感じます。彼にも、というかどんな人間にも尊厳や矜持は有り、それを侮辱されたら怒るでしょう。その真っ当な怒りが1つの死で露わになるのだから皮肉です。
 
 
その傍らに在るのが、小犬のビブと呼ばれるプードル犬。この子が可愛いの何のって。ボール遊びをねだったり、公共機関に乗る時にナップザックに入るところが可愛い! しかしそんなビブも主人の異変を敏感に察しているようで……ビブの無邪気さと可愛さがアラールの虚しさと対比して哀しさ倍増……
 
 
「小犬を連れた男」でした(・∀・)/ 
次はまさかの世界一の名探偵が絡んだ殺人事件!?(*^o^*)/