ジェームズ・ヒルトン◇学校の殺人◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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寄宿学校で次々と起こる恐ろしい殺人事件……!!
 
 
 
 
◇学校の殺人◇ -Was It Murder? (Murger at School)-
ジェームズ・ヒルトン 龍口直太郎 訳
 
 
探偵の才ある文学青年コリン・レヴェルは、母校の校長から、学内で発生した怪死事件の調査をしてもらえまいか、という手紙を受け取った。三か月前、寄宿舎で寝ていた生徒が重いガス灯用具の落下をまともに受けて即死した。陪審員は“事故死”の評決を下したが、その生徒の奇妙な遺言状が発見されるに至って事件は新たな様相を帯び……。本書は世界的文豪ジェームズ・ヒルトンが書き下ろした唯一の長編推理小説。ミルン『赤い館の秘密』やモーム『秘密諜報部員』と並ぶ、『チップス先生さようなら』や『鎧なき騎士』の著者による、異色の本格ミステリ作品である。ヴィンセント・スターレットは「類型を脱した、第一級の傑作」と絶賛した。
 
 
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詩人の真似事をして暮らす有閑貴族のコリン・レヴェルは母校オーキングトン校の校長ローズヴィアから怪事件の捜査を依頼される。オーキングトン校では先日生徒ロバートがガス灯用具の下敷きになって死んだのだが、後日彼の遺言状が見つかったのだ。彼は自分の死を知っていたのか? 事故死という判定だったが、それ以外に何かがある? と不安に駆られてオックスフォード大で探偵の才を見せたOBレヴェルに助けを請うた訳だ。
 
 
ところが、レヴェルが学校の関係者と会って話を聞き始めるとローズヴィアの態度が変わった。単なる自分の杞憂だったなどと言うのだ。出鼻を挫かれたレヴェルだったがその直後に今度はロバートの兄のウィルブリアムがプールの浴槽で死んだ。これも事故死なのか? それとも……? レヴェルは学校への滞在を延ばして捜査を実行し、亡くなった兄弟の従兄弟で寮監のエリングトンに疑いの目を向けるが、第3の事件が起きてしまう……
 
 
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「学校の殺人」です(OvO)
 
 
これを書いたのはあの「チップス先生さようなら」や「心の旅路」等を書いた文豪ヒルトン(1900〜1954)。A・A・ミルンと同じく文豪が書いた本格ミステリーです。この作品が描かれたのは1932年で実はヒルトンの経歴では初期の方。世相的に文学で身を立てるなら推理小説を書けなければならない、みたいな風潮があったに違いない。
 
 
現代でこそ腐るほどある学園ミステリですが、当時としてはかなり画期的で珍しい舞台だったと推定されます。というのも当時学校(大学を除く)を舞台にした作品は非常に少なかったからです。ドイルもクリスティーも1作品しか書いておらず(しかもクリスティーのはわざわざ舞台を学校にしなくても良かった並みの話である)、ディクスン・カーやクイーンに至っては1作品も書いていない。ハリー・ポッターシリーズが英国で大ヒットしたのは学校を舞台にして新鮮だったから、という話を何処かで耳にしましたが、当時も未成年が沢山集まる寄宿学校で殺人事件など冒涜的過ぎて考えられなかったに違いないです。
 
 
本格ミステリなのでやはり素人探偵がおります。レヴェルくんという名前の有閑貴族でセイヤーズ女史のピーター卿からバンターを取り上げてもっと自惚れさせたらこうなる、って感じの青年です。一応依頼されるのは探偵をしますが、今の基準からするとお前、何やってんじゃ……って感じです。特に天才的ひらめきが無いのはともかくとして警察や容疑者の一挙一動に振り回されがちだし、美味しいところは殆ど持っていかれています← そういう結末にするなら最初からスコットランド・ヤードのガスリーに任せれば良かったのでは無いでしょうか……そして案の定、犯人こいつじゃないかと思った人が犯人だった……推理小説を沢山読んでいるとこういう時やだなー……
 
 
とはいえ、少ない登場人物をふんだんに動かして事件の目眩しになったり、なってしまったりするところは人物の出し方が上手いなと思ったり。
 
 
「学校の殺人」でした(・∀・)/
次は珍しく、人から勧められた現代の物語を読んでみます(*^o^*)/