ペーター・R・ヴィーニンガー◇『ケルズの書』のもとに◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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轢き逃げ事件を起こした男は装飾写本『ケルズの書』の陰謀に巻き込まれるーーー

 
 
 
 
◇『ケルズの書』のもとに◇ -Die Supr der Katzen-
ペーター・R・ヴィーニンガー 松村國隆 訳
 
 
中世の装飾写本『ケルズの書』が辿る数奇な運命とそこに密かに刻まれた謎の文字…かたや現代のウィーンでひき逃げ事故を起こした男のもとに舞い戻る無傷の愛車…絡み合う2つの時間、2つの謎。
 
 
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1992年、ウィーン。経済省の役人シュタインヴェントナーはある夜、1人の男を轢いてしまう。考えた末、しかも車も盗まれた。奇跡的に戻って来たが、その車は何故か無傷だった。何故ならその車はシュタインヴェントナーの車ではなかったからだ……
 
 
その後は彼は何者かから「鍵を返せ」という脅迫めいた電話をもらう。恐らく轢かれた男が持っていたどこかのロッカーの鍵だ。シュタインヴェントナーは確かめにウィーン西駅に行くが、そこに入っていたのは「71793843100」という数字の羅列だった。何の意味があるかは分からないが、彼らは鍵を奪ったり、数字の羅列が書かれた紙を奪おうとシュタインヴェントナーを襲ったり、家宅侵入を試みる。決して生温い連中では無い。
 
 
シュタインヴィーニンガーは数字の郵便番号と電話番号からザンクト・ペルデンの『ファースト&チープ・データ・システム有限会社』に行ってみるが、そこで彼そのものの人生が大きく変わることに……
 
 
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「『ケルズの書』のもとに」です(・∀・)
 
 
現代ウィーン・ミステリシリーズ第1弾です。といっても舞台は1992年なんですが← もう20年以上も前やんけ。
 
 
本書は現代の事件に歴史的著作物が絡んだちょっとダン・ブラウンちっくな話です。
『ケルズの書』はアイルランドの国宝で、世界一美しい聖書写本と言われていますが誰が書いたかは分からないし、謎も多いと言われています。本書はヴァイキングの襲撃を避けながらも書を完成させるところ、盗まれるところ、その修道士たちの中に異教徒たるゾロアスター教徒が混ざり、『善に与することは赤を理解することを意味する』と謳うアフラ・マズダーの導きの下、悪のアンラ・マンユを撲滅せんと『ケルズの書』を手に入れようとする顛末が描かれています。ゾロアスター教は拝火教と呼ばれる宗教ですが、その描写は全然無かったですね。
 
 
まさかの衝撃のラスト。ええーっ!!? シュタインヴェントナー、最後はそうなるの!? それ、ありなの!? これぞ「奇跡」!? 居合わせたフンメル警部も部下もこれには茫然とする他ありません。神に選ばれる人はこうやって偶発的に神に選ばれるのでしょうか……
 
 
本書は時々過去に行くし、後半はザンクト・ペルデンに行ってしまうしでウィーンはちょっとしか出て来ません。なので少し残念。次の作品はどうだろう? なんかコロナコロナコロナ……の今にはタイムリーな題名だけど……
 
 
「『ケルズの書』のもとに」でした(・∀・)/
次はあの伝染病が登場……するのか!?(*^o^*)/