泉鏡花 No.6◇鏡花随筆集◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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随筆に表れる鏡花のもう1つの世界ーーー

 

 

 
◇鏡花随筆集◇
泉鏡花 吉田昌志 編
 
 
「四時とも、私は雨が大好き...」(「雨のゆうべ」)。自然に風土に、生活に食に芸能に、そして思い出に―生活に根ざした随筆にこそあらわれる、もうひとつの鏡花の世界。多彩な題材の五十五篇を精選、現代の読者のために詳細な注を付す。
 
 
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1.玉川の章
 
 
2.雨のゆうべ
 
 
3.飛花落葉(抄)
 
 
4.春孤談(抄)
 
 
5.森の紫陽花
 
 
6.草あやめ
 
 
7.北国空
 
 
8.一景話題
 
 
9.自然と民謡にーー郷土精華(加賀)
 
 
10.寸情風土記
 
 
11.山の手小景
 
 
12.逗子だより
 
 
13.蘆の葉釣
 
 
14.真夏の梅
 
 
15.湯どうふ
 
 
16.新富座所感
 
 
17.水際立った女
 
 
18.くさびら
 
 
19.露宿
 
 
20.十六夜
 
 
21.火の用心のこと
 
 
22.愛と婚姻
 
 
23.醜婦を呵す
 
 
24.一寸怪
 
 
25.術三則
 
 
26.雨ばけ
 
 
27.かながき水滸伝
 
 
28.小鼓吹
 
 
29.遠野の奇聞
 
 
30.三十銭で買えた太平記
 
 
31.『金色夜叉』小解
 
 
32.豆名月
 
 
33.『諸国童謡大全』序
 
 
34.『怪談会』序
 
 
35.『デモ画集』序
 
 
36.『数奇伝』序
 
 
37.『築地川』序
 
 
38.妖怪画展覧会告条
 
 
39.煙管を持たしても短刀位に
 
 
40.献立小記
 
 
41.健ちゃん大出来!
 
 
42.九九九会小記
 
 
43.一葉の墓
 
 
44.紅葉先生逝去前十五分間
 
 
45.仲の町にて紅葉会のこと
 
 
46.夏目さん
 
 
47.みなわの集
 
 
48.入子話
 
 
49.番茶話
 
 
50.芥川竜之介氏を弔ふ
 
 
51.『泉鏡花篇』小解
 
 
52.『斧琴菊』例言
 
 
53.いろ扱い
 
 
54.おもて二階
 
 
55.幼い頃の記憶
 
 
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久しぶりの「文豪ストレイドッグス制覇計画」どころか更新も私にしては間が空いてしまい、すみません。私生活がかなりばたばたしていて……9しばらくこんな感じかと思います……
 
 
さて、三巻編。ポートマフィアの命令を受けて動いていた鏡花ちゃんを確保した敦くんとくにっきー。なんとか情報を得たいとくにっきーは脅しますが、鏡花ちゃんは淡々とあるものを食べたいと言い、食べたら話すと言います。それがこちら!
 
 

 
まさかの湯豆! 渋い! 渋い趣味だ!!
史実の「泉鏡花」は安全第一、清潔第一がモットーでしたから不純物も何もない、熱っつあつの湯豆が好物でした。15はそんな湯豆を語っています。とはいえ、若い頃は特に好きでもなかったようです。鏡花にも普通の頃があったのか←
 
 
って考えるとこっちの鏡花ちゃんって大変渋いなと思ったのですが、よく考えればそれも当然です。何故なら武装探偵社も、ポートマフィアも殆どのメンツが史実上では鏡花よりも歳下! 1870年代って相当昔だよね……1909年生まれの中島敦や太宰治からしてみれば……
 
 
泉鏡花は当時の人には珍しく日記をつけませんでした。なので彼の人生や思考嗜好は人聞きか彼の手になる随筆でしか窺うことができません。本書はそんな彼の考えや生活の一部を見せてくれる貴重な資料です。
私は前半の自然や風土を描いたものが好きです。特に14の梅干し造りを始める家内(すゞのこと)の団扇捌きを見て「うまいよ」と言うのが好きです(*´ - `)(*´ー`*) その団扇捌きが蝿を追い払い、それはそれは透明な梅干しを作るのでした←
 
 
紅葉や一般人が持っていた封建的結婚観に反発して書かれた22と23はすゞと出逢う1895年に書かれました。そしてそれを一生貫き通しました。いい話だ。最後の55の女はすゞだと証明する論文があります。なかなか興味深いです。
 
 
本書には「湯どうふ」以外にも文ストの元ネタ、というか史実の関わりあっての文ストというところがありますので見ていきます。
 
 
 
 
40と50より文スト3巻、芥川と鏡花ちゃん。アクション漫画なので敵だと扱いはぞんざいですし、無慈悲です。本来歳下の芥川が鏡花ちゃんを手駒に使っています。文アルが知ったら気絶する!その1! 史実では芥川が鏡花に憧れていて特に『草迷宮』が好きだったそうです。その芥川が映画で鏡花ちゃんの形見の携帯電話に言及するのは(史実上)のファンなら「おっ!」となりますね。50も担うなら芥川の死際は鏡花ちゃんが看取るのでしょうか……
12巻や映画ではまた別のものから参考してみます。
 
 

 
31より文スト5巻、紅葉姐さんと鏡花ちゃん。文アルが見たら気絶する!その2。泉鏡花の唯一の師、尾崎紅葉。その代表作にして遺作になった『金色夜叉』に関する随筆です。同じく門下生だった小栗風葉が続篇を書きましたが、まさかの鏡花は読んでいない! え、ええー……鏡花は「却って、好意と友情」と書いていますが、多分そういうところが風葉曰く「あの偽善者」になったんだろうな……
 
 
またここの紅葉は紅葉の愛人芸者だった小ゑんの影を見ることができます。闇(=苦界)からは逃れられない、身の丈に合わない幸せは辛いだけだと泣くのは一方で逃れられる、幸せになる可能性のある鏡花ちゃんが密かに羨ましいところもあり、それはとうとう紅葉の妻にはなれなかった小ゑんの気持ちなのかもしれません。
 
 

 
43より文スト12巻。樋口と鏡花ちゃん。史実の鏡花が見たら気絶する!その3! 鏡花は死ぬ間際の一葉と交流があり、ライバルだと思っていました。文ストでは逆で芥川に力量を認められているのにそれから逃げ出した鏡花が憎くも悔しくもあるのかな。と。というか史実では全く関係の無かった樋口と芥川がコンビを組むって面白いよね……何を考えたのでしょう。
 
 
「鏡花随筆集」でした(・∀・)/
次はシムノン・ノン・シリーズです(*^o^*)/