現代人の愛と時間の悲しさ、切なさ。
◇透明な迷宮◇
平野啓一郎
深夜のブタペストで監禁された初対面の男女。見世物として「愛し合う」ことを強いられた彼らは、その後、悲劇の記憶を「真の愛」で上書きしようと懸命に互いを求め合う。その意外な顛末は……。表題作「透明な迷宮」のほか、事故で恋人を失い、九死に一生を得た劇作家の奇妙な時間体験を描いた「Re:依田氏からの依頼」など、孤独な現代人の悲喜劇を官能的な筆致で結晶化した傑作短編集。
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1.消えた蜜蜂
……静養のため、地方に一時滞在した私。そこで郵便局員のKと親しくなるが、彼には人の筆跡をそっくり模倣できる特殊な能力があった。
2.ハワイに捜しに来た男
……ハワイに自分に瓜二つの男を捜しに来た男。しかし行きずりの女にその男は捜せないだろうと言われる……
3.透明な迷宮
……ブダペストで誘拐、監禁に巻き込まれた私と、初対面だった「ミサ」。愛し合うことを強制された彼らは一緒に日本に帰ろうとするが、ミサは姿を見せず……
4.family affair
……父の葬儀を終えた登志江はその遺品整理で拳銃を見つけてしまう。
5.火色の琥珀
……子どもの頃の体験で火に恋愛感情を抱いた男。その男が火と結ばれる時とはーーー
6.Re:依田氏からの依頼
……小説家の大野は知人のTから劇作家の「依田氏からの依頼」というメールを受け取る。その「依頼」とは依田氏から聞き取った話のメモと録音から小説化して欲しいという依田夫人によるものだった。大野は夫人への不信感を拭えないまま仕事を引き受ける……
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「透明な迷宮」です(・∀・)
比較的新しい短編集です。短編を読もうと、出版年関係無しに引っ張り出したので読む順番間違えたかなとも思いましたが、まぁ、それはそれで←
3、5、6のような愛という感情の切なさとぽっかり穴が空いたかのような、しかも埋められる代わりのない喪失感、1や4のように人間そのものの悲哀、6は前者も後者もどちらもある力作と言えます。……しかしこの短編集、悲劇はあっても喜劇は無いような……
もしかしたら貴方の現実であり得るかもしれない出来事を綺麗な文章で書いています。言い回しが口説くても、カッコつけでも「小説でしか」表せない言葉ってありますよね。小説は文章が視覚化されるから熟考できるという強みがあります。噛み締めて噛み締めて初めてその文章の巧さが分かるというか。純文学というのは得てしてそういうものなのかと思います。一読だけでは分からないですね。
「透明な迷宮」でした(・∀・)/
次はヴェルヌ〜……じゃなくて有名な新本格ミステリに行きます! あまりにもトリックが奇抜過ぎてネタバレされちゃったアレです!(*^o^*)/