アーナルデュル・インドリダソン No.5◇厳寒の町◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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その厳しい寒さは拒絶の為なのか。血も凍てつく恐ろしくも悲しい殺人事件の真相はーーー

 
 
 
◇厳寒の町◇ -Vetrarborgin-
アーナルデュル・インドリダソン 柳沢由美子 訳
 
 
男の子の年齢は十歳前後。地面にうつ伏せになり、体の下の血溜まりは凍り始めていた。アイスランド人の父とタイ人の母の間に生まれた男の子は、両親の離婚後、母親と兄と一緒にレイキャヴィクの住宅街に越してきた。人種差別的な動機による殺人が疑われ、エーレンデュルら捜査陣は、男の子が住んでいたアパートや通っていた学校を中心に捜査を始める。CWAインターナショナルダガー賞最終候補作、世界のミステリ界をリードする著者が現代社会の問題にメスを入れた、シリーズ第5弾。
 
 
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殺された子どもはタイから移り住んできたタイ人女性とアイスランド人男性との間に生まれた子どもだった。エーレンデュルら捜査陣は早速捜査を開始するが、その子ども、エリアスに特定して恨みを持った人物は浮かび上がって来ない。そうなると個人を選ばない少年愛か人種差別が動機である可能性が高い。しかもエリアスらが通う学校には反移民的思想を抱く教師がある。ところがエリアスの兄ニランからも話を聞こうとした矢先、母親スニーが彼を「安全な場所」に隠してしまう。
 
 
別件で女性失踪事件も抱え、上司のマリオンも死の淵になり、公私共々パンク寸前。そんな中失踪したと思しき女性からの謎の電話が度々かかってくるようになる。要領を得ない話し方で突き放してしまうが、その女性が失踪した女性では無いことが分かった時、真実がーーー
 
 
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「厳寒の町」です(・∀・) 約2年ぶりのエーレンデュルシリーズです。5冊目のテーマは21世紀ならではの課題とも言える移民問題。北欧ではかなり早くから移民を受け入れていましたが、今はかなり制限されています。読んだデンマーク、ノルウェー・ミステリの中ではそれらが各所に出ています。アイスランドって外来語も無いような難解言語を使いこなす国ですが、それでも移り住みたい人って居るんだな……
 
 
移民問題は日本でもだんだん議論に上がる回数が増えています。私は間違ってもキャルタンみたいなのは論外で絶対に間違ってると思っていますが、かといってフィンヌルのように全面的に希望的にも寛容にもなれない。エーギットルの考えが一番近いかもしれません。海外の考えが入るとどうしてもその国の良いところに目が行きがちですが、外国の考えが全部良くて正しいということはあり得ないと思っているし、移住先の国の文化や考え方に理解ーーーはできなくても仕方がないが、倣うことは当たり前のことだと思う。
 
 
今回の事件は移民問題による人種差別が絡み、それが事件を複雑化しています。アイスランドって今までこの種の犯罪が無かったんでしょうか……日本ならこの犯人像も動機も空想のものではないのですが……アイスランドの犯罪も複雑、多様化しています。
 
 
……というかマリオンって女性の可能性もあったんだ!? えー、びっくり! 普通に男だと思っていました。確かに「彼、彼女」でマリオンが書かれているところは本作もありませんでした。一体作者のアーナルデュルは何のためにそんなことを……もしかしてマリオンって……?
 
 
破滅的人生を歩くエヴァとその3歩ぐらい後ろにいるシンドリ。エヴァが見た夢はエーレンデュルの苦しみを新しい局面に導きました。次回、進展あり!? 当分無さそうですけど!←
 
 
「厳寒の町」でした(・∀・)/  
次も懲りずに平野啓一郎です(*^o^*)/