ジュール・ヴェルヌ No.29◇名を捨てた家族 1837-38年のケベックの叛乱◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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英国の専制的支配に抗うフランス系カナダ人のヒーローは忌まわしき呪われた名前の息子!

 
 
 
◇名を捨てた家族 1837-38年 ケベックの叛乱◇ -Famille Sans Nom-
ジュール・ヴェルヌ 大矢タカヤス 訳
 
 
19世紀前半のカナダ・ケペック。圧政に苦しむフランス系住民の前に現れた一人の青年。しかし、人々の希望である彼には、けっして明かしてはならない過去があった……
 
 
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1837年。15世紀にシャンプランらに導かれてカナダに定住したフランス人たちの子孫はフランス系カナダ人として生き、専制的に支配する英国から独立しようと叛乱を企てていた。彼らの希望の星は『名無しのジャン』と呼ばれる身元不明のカナダ人だ。英国の警察の追及を幾度も逃れ、絶対に人前に顔を出さないその『ジャン』はその名前だけでフランス系のカナダ人たちのヒーローだった。
 
 
尤も英国に対するフランス系カナダ人たちの叛乱は12年前にも計画された。ところがそれは密告者の出現により失敗。計画者の大半は処刑された。密告者の名前はシモン・モルガス。尊敬に値する改革のリーダーたちを失った民衆はその存在を呪い、名前を呪い、彼に繋がる全てを呪った。ところがモルガスの家族たちは未だ残っていたのだ……
 
 
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「名を捨てた家族」です(・∀・)
 
 
歴史的事件を題材に取った、ヴェルヌ1、2を争うぐらいのシリアスな話です。主人公が公証人書記リオネルのように「独立!」「自由!」と皆んなで叫ぶことができる単純な若者ではないところからしてそもそも重いですよね。そしてここでもアンチ英国です←
 
 
占領された歴史を持つ国の人間にとって1番憎むべきなのはある意味支配者ではなく、その支配者に協力してしまった自国民ですよね。所謂『売国奴』。その支配国が独裁的だったら尚更です。本書も金で仲間を売ったばっかりに民衆全員から嫌われ、憎まれ、存在すら呪われた穢された存在になってしまいました。本書はその呪われた名前を捨て、その男が売国奴にならなければとっくに成し遂げられたかもしれない偉業を成し遂げようと奮闘する話です。そんなわけでジャンの正体は比較的早い段階で分かるわけです。
 
 
しかし読めば読むほど『売国奴』シモン・モルガスの名前が憎まれ過ぎてモルガスに関わるもの全てが憎い状態でそれが本当に怖すぎます。こんな状態で身元を明かしたらジャンやお母さん、殺されるやん!! と読んでいて心臓に悪かったです……こんな状態では仲間には許してもらえなさそうだし……そもそもケベック州って今尚カナダの一州に過ぎないし、叛乱の結末が見えてしまう時点でこの話がヴェルヌ始まって以来の悲しい結末を迎えるのが分かってしまう訳で……ううっ、ヴェルヌが死なせるのは敵キャラだけだと思ったのに逆じゃないかーーー!!
 
 
ヴェルヌを読むからにはもっと明るい気分になりたかったです……。゚(゚´Д`゚)゚。
 
 
「名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱」でした(・∀・)/ 
次は「文豪ストレイドッグス制覇計画」3巻突入! 初対面は殺人機械、二目は石像のような寂しそうな彼女の年相応の姿に迫ります(*^o^*)/