ジュール・ヴェルヌ No.20◇ミステリアス・アイランド・上◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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囚われの身から脱出した捕虜たちが着いた島は"不思議な島"だったーーー

 
 
 
◇ミステリアス・アイランド・上◇ -L'ile Mysterieuse-
ジュール・ヴェルヌ 手塚伸一 訳
 
 
1965年、南北戦争下のアメリカで南軍の捕虜となっていた五人と犬一頭が、嵐の夜、気球にのって逃亡を図る。激しい風雨に翻弄された太平洋上を漂流したあげく、たどり着いたのは、絶海の孤島だった。マッチ一本、小麦一粒、犬の首輪以外何も持たず、着のみ着のままという状況で、力をあわせ、生き延びようと苦闘する彼だだったが…。迫真のサバイバル劇にして名作『海底二万里」の知られざる続編。
 
 
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南北戦争終戦間近。南軍の捕虜になってしまった技師のサイラス、新聞記者のスピレット、囚われたサイラスを助けに来た召使いネブ、足止めをくらった元水夫のペントラフと養子のハーバート、サイラスの飼い犬トップは南軍が使うはずだった気球に乗って脱出した。ところが悪天候で気球の操縦はほとんどの荷物を捨てる以外に不可能になり、とある島に不時着する……サイラス以外の4人が……
 
 
4人は仮の住まいチムニーを建設して必死にサイラスを探すが見つからない。ネブの不眠の探索によりサイラスとあるトップが生きた姿で見つかるが、見つかった場所は海や砂浜を上がった砂丘の洞穴の中である。波に攫われ、瀕死の状態にあった割には大した距離である。その時はサイラスの火事場の馬鹿力だろうと解釈したが……
 
 
サイラスら5人はこの無人島をリンカーン島と名付け、長く留まるであろうと予想して家を作り、道具のための金属を作り、交通手段のための船を作り、畑を作り、しまいには島に住んでいたオランウータンを2人目の召使いにするなどして国を建設するよろしく適応していく。しかしサイラスの胸中には大陸と同じぐらいに多様性に富むリンカーン島には自分たちを助けようと自分たち以外の何物かかいるのではないかという疑念が拭えない。そしてそれは仕留めたジャガーの葉の間に鉛弾が見つかったことで大いなる核心に変わっていく……
 
 
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そいつは観測室をゆっくりと、弧を描くように歩いた。短刀をーー青く輝く鋼鉄の刃をゆっくりと閃かせながら。
「お前には色々嘘をついちまった」ガブは平坦な声で言った。「けど全部が嘘って訳でもねぇんだ。ガブは本名だし、盗賊の一員だったことも事実だ。一員になったのは、ボスがこの島に入ってからだけどな」
(中略)
敦の頬を大粒の冷や汗が流れた。
ガブの云う通りだ。
「敦、君……」太宰の声が細く響いた。「そいつと……戦うな……。そいつは異能者、否……異能、そのものだ……」
 
 
 
 
ーー「文豪ストレイドッグス -55Minutes-」より。
 
 
久しぶりの「文豪ストレイドッグス制覇計画」小説4巻目、黒幕の登場です。異能が人間に逆らい、凌駕した存在。人間の中にいた時よりも多くの力を持ちながら絶対に自由になれないーーー異能そのものの登場です。言わば映画の元ネタです← 澁澤も元はああだったのかな……よくよく考えたら異能って人間あってこその存在なのにその人間を凌駕してしまうって凄いですよね……
 
 
写真のガブはーーーブレてすみませんーーネモ率いる盗賊団の仲間……と思わせて実は黒幕どころか異能【神秘の島】そのもの。本当のガブこと「ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ」は大人で"七人の裏切り者"として先の大戦を終わらせた1人でした。この大戦にしては最近漫画でもやっと片鱗を見せてくれましたが、あくまでも本編は漫画なんだから番外編で先に進めるのはフェアじゃないと思う……
 
 
異能【神秘の島】。【自らが領土とした島で死んだ人間の異能を特異点以外の制限無しに全て使うことが出来る異能です。今はスタンダード島が彼の領土なのでそこで死んだ異能者の異能はそのまま彼の思いのままになる訳です。わー、すごい。その島に生きた人間の異能を使うことができると云うのは元ネタ「神秘の島」に符合する訳です。
 
 
元ネタ「神秘の島」は南北戦争終戦間近、そこから脱走した捕虜含む5人と1匹が南半球のどこかに位置する謎の島に漂着してそこで生きていくと云うガチサバイバルもの。いやだって衣食住の全てーーー家を建てる、そのための道具を作る、金属を作る、交通手段の船を作る、畑を耕す、家畜を飼い、さらには衣服を作ると云う衣食住全部を熟そうとするんですから。ヴェルヌ作品あるある人員が出木杉君です。最年少のハーバート少年すら有能で勉強家なんて……私が恥ずかしいよ!!
 
 
本作で珍しいのは上巻の時点で敵役が全く出てこないこと。まるまる1巻、サバイバルの巻なんですよこの話。5人と2匹は本当にサバイバルしかしていません。招来無人島暮らししたい人にはこの本を持っていくと良いかもしれません← しかし全く不気味な影がない訳ではありません。恐らくサイラスを運び、トップをアザラシから助けてくれて、必要な道具を樽に入れて海に漂わせて……いや、めちゃくちゃ人の良い不気味な影だな? けれど無人島サバイバル生活にしては用意周到過ぎるし、不気味です。また1つの島に肉も海洋生物も野菜もパンの代わりになる植物も煙草もあって、その傍らオランウータンからジャガーといった危険動物もいるなんて多様性に富むにも程があるし、なんというか人工的に作られた感満載ですよね……こういうところが「海底2万マイル」の続編と言われる所以か!? まさかネモ船長が出るのか!? どうなのか!?
 
 
その疑問が下巻で明かされる訳です(*^o^*)/