ジョルジュ・シムノン No.65◇過去の女◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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恩人の男を殺した男の内面はーーー

 
 
 
◇過去の女◇ -Le Temps D'Anais-
ジョルジュ・シムノン 松村喜雄 訳
 
 
みぞれの降る、とある夜、オルレアンに近い酒場に異様な風体の男が入ってきた。帽子もオーバーもなく、襟を立てた背広の袖口から雨をしたたらせている。男は疲れ切った体を大儀そうに運んでカウンターに近づくと、酒場の亭主に、電話を貸してくれと低い声で頼んだ。他所者に対する村人の不審と好奇のまなざしを背に浴びながら、彼は電話機に手をのばした。呼び出した相手は土地の憲兵隊だった。「私はたったいま、人を殺してきました……」
アルベール・ボーシュと名乗るその男は、妻と通じていた同僚ニコラを殴り殺したのだと自白した。だが、その直接の動機についてはなぜか沈黙を守るばかりだった。この落ち着きはらった、育ちのよさそうな青年を、息がとまるまで殴り続けるという残忍な犯行に駆りたてたのは何だったのか? その心の奥底を探り出そうとする精神科医に、ボーシュがわずかずつ語りはじめた過去─そこには、いまなお彼に暗い影を投げかけるひとりの女がいた。娼婦アナイ─ボーシュが語りたがらなかったこの女の、謎めいた実像とは……?
発表当時、本国フランスはもとより、英米でも『雪は汚れていた』以来の傑作として絶賛を博した話題作。男女間のセックスを赤裸々に描写し、それを通して殺人者の孤独な内面を冷たく解剖した異色の心理小説!
 
 
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その酒場に入って来た男はよそ者だった。一目で分かる。こんな夜遅くに自分のいる場所も分からず、車で走らせる男がいるだろうか。しかも電話をかけなくちゃならないと言い張るではないか。電話をかけるとなぜか憲兵隊を呼び出し、一言。
「わたしはパリで1人の男を殺しましたーーー」
 
 
たちまち引っ立てられ、パリに送られるその男アルベール・ボーシュ。しかしこの男が本当に殺人を? というのも同僚セルジュ・ニコラは何度も殴打された惨たらしい姿で見つかったからだ。この落ち着き払った男が死んだ男を何度も何度も殴ったのか?
 
 
しかも動機を語らない。動機は妻のフェルナンドがニコラの情婦だと知ったからではないのかしかしボーシュはそれを否定する。やがてボーシュは精神科医のメシャルゥのところへ鑑定を受ける。ボーシュの中でずっと燻っていた女アナイをきっかけにボーシュの秘密が明かされる……
 
 
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「過去の女」です(・∀・)
 
 
シムノン十八番の殺人者の内面から孤独を掘るパターンの話です。今回は恩人である男を滅多打ちにして惨殺したボーシュの内面に最終的にメシャルゥという精神科医が迫ります。
 
 
若い時に関係を持った「過去の女」アナイとボーシュの妻で被害者の情婦だった「現在の女」フェルナンドの2人の女を語るうちにボーシュの孤独さと恩人を殺した理由が明らかになります。この静かに、暗闇の中をひたひたと迫り来る感じがシムノンっぽい。出てくる人物はある意味誰も幸せではなく、特にフェルナンドの孤独さは際立っています。そしてやはり殺人者の孤独さを寂しさを侘しさを理解できる人間などいないのでしょう。理解できちゃ多分ダメなんでしょうが。
 
 
「過去の女」でした(・∀・)/ 
次はちょっとーーー………何を読むか分かりません←え