ジュール・ヴェルヌ No.14◇動く人工島◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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サンディエゴに行くつもりがなぜか高技術の発達した動く人工島へ!? 

 
 
 
◇動く人工島◇ -L'ile a Helice-
ジュール・ヴェルヌ 美輪秀彦 訳
 
 
フランスの弦楽四重奏団の一行が連れてこられた都市は、科学技術の粋を集めた、人類の理想郷ともいうべき動く人工島であった! 幼少期からロアール川の河口にあるフェイドゥ島を眺めて育ったヴェルヌは、その河口島がそのまま動く島となって海に流れ出ることを夢想していたという。ヴェルヌ晩年のこの長編は、少年期の夢の再現であり、生涯にわたるテーマが集約された傑作である。
 
 
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サンディエゴに向かうはずだったフランス人の弦楽四重奏団パンシナ、イヴェルネ、フラコラン、セバスチャン・ゾーンはその道中馬車が転覆したせいで徒歩で移動する羽目に陥る。しかし時刻は夜でこれ以上の前進は難しく、どこかの村で寝む必要があった。一行はなんとか歩いて夜の村に到着する。
 
 
そこで出会ったのはカリスタス・マンバーというお喋りな男。その後に続くとなんとサンディエゴに並ぶ大都会に着いた。おかしいな、御者はそんなこと言わなかったし、サンディエゴまでは都会はないと聞いたのに……まぁ、なんでも良いと楽観的にマンバーから町の案内を受ける一行だが、何やら隠していることがあるらしい。
 
 
それは展望台に上った瞬間に分かった。一行は今やアメリカ大陸にいなかったーーー見えるのは海だけだった! しかも動いている! そう、この島は科学技術を駆使して作られた"動く"理想郷だったのだ!!
 
 
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「大型洋上浮動都市『スタンダード島』」国木田が手帳を繰りながら云った。「独逸・英国・仏蘭西の欧州三国が共同設計した"航海する島"であり、かつ三国が共同統治する領土でもある。操舵による自立航行能力を持ち、エネルギーは陸地に頼らず完全自給。島内は中世から近代の欧州を再現した建築物が並ぶ保養地であり、世界中の富豪が気前よく金をばらまいていく。ーー普段は発電に最適な気候を求めて南太平洋を漂っているのが、偶々こうして横浜の近海に来ているという訳だ。まあ乱暴な云い方をすれば……あれは島というより、おそろしく巨大な、一艘の船だな」
 
(中略)
 
「何だか……冗談みたいな島ですね」
 
「違う。あの島は実際冗談そのものだ」国木田は首を振った。「覚悟しておけ。島に足を踏み入れたら最後、何が起きてもおかしくはないぞ」
 
 
ーーー「文豪ストレイドッグス-55 Minutes-」より
 
 
そんなわけで「動く人工島」ことスタンダード島にようこそ!(・∀・) そして令和の「推理小説のお時間」にようこそ← 最初の投稿は「動く人工島」です。おめでとうヴェルヌ!
 
 
昨日は文スト祭りでしたねーコミック買いに走りました。「わん!」のも買ったんですが、いつも通りのギャグなのに切なさがすごくて表紙とある話のおまけ一コマを見て泣いてしまいました。翌朝起きたら目が腫れてました。マジか……
 
 
閑話休題。
 
 
今回の「文豪ストレイドッグス制覇計画」小説版4巻目からまたもヴェルヌ。こうしてみるとヴェルヌが黒幕だと分かる人は分かるわけですな。
作品の中に登場する「スタンダード島」は「文スト」のために設定を変えたところはありますが概ね同じです。
 
 
そんなわけで本作。島全体が船、住人全員が船員にして航海者という超冒険者スタイルです。こういうところはアメリカ人っぽいです。もともとフランスとアメリカは友好関係が深かったのでフランス人の弦楽四重奏団がスタンダード島で暖かく迎えられた理由は合点がいきます。そして英国と南洋諸島に対する偏見がすごい。
 
 
この話の要はスタンダード島です。ぶっちゃけると主役はスタンダード島そのものなんです。スタンダード島がどれほどの科学技術をもって作られているか、島にはどんな人たちが住んでいるのか、どんなことに興味を持っているか、どんな人が歓迎されるのか、そしてその島で何かが起こるのか起こったのか、そしてどんな運命を辿るのかーーーこれはいわばスタンダード島の運命を辿る話であり、登場するフランス人弦楽四重奏団も島の芸術監督マンバーも総督も海賊も対立する2つの家もスタンダード島の人生の一欠片でしかないのです。
 
 
そしてスタンダード島は「起こるにして起こった」争いによって壮絶な最期を迎えます。最期は「文スト」とかぶります。スタンダード島は再建の道があるのか、最後は希望と同時に警告もあり、確かに晩年に書かれた作品という匂いもします。
 
 
「動く人工島」でした(・∀・)/ 
さて、これで復刻イベ月間は終わりましてまた通常の読書の輪に戻ります。全然進まなかったので半年に1回のペースでやることにしました! なので次は10月です。お楽しみに!
しかし次はホックではなく、カズオ・イシグロなんだよなぁ〜(*^o^*)/←え