ジョルジュ・シムノン No.43◇カルディノーの息子◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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男と逃げた妻を追いかける男を待っていたものとは。

 
 

 
◇カルディノーの息子◇ -Le Fils Cardinaud-
ジョルジュ・シムノン 秋山晴夫 訳
 
 
彼は満足だった。聖体拝受をしたその日から現在の妻と結婚したその日から、満足だった。貧民街地生まれながら彼だけは持ち前の商才が幸して貧窮の泥沼から這い出すことができた。保険業者としても安定し、美しい妻と子宝に恵まれて、"カルディノーの息子は成功した"と人にもいわれる身の上だった。だが……ある平和な一日、ほかの日と少しも変わらない平穏無事な一日から、彼の幸福が土台から崩れていこうとは……。その日カルディノーは日曜日の大ミサに、息子を連れて出かけた。ミサは澄み切った一塊の雰囲気に彼を包んでくれたみんな満足していた。そして家に帰った時彼はふと奇妙な気配を感じたのだ。妻のマルトが留守の間に行先も告げず出かけてしまったのだ。そんな事は今までに一日もなかった。いやな予感がした。彼の生活のすべてが、実は空虚な蜃気楼だったような……。
 
 
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いつも通りの平和な日のはずだった。ーーー妻のマルトが何の前触れもなく、姿を消さなければ。しかも生活費の3000フランを持って。そんな事も一度もなかったのに……
 
 
カルディノーは金を前借りして休みをもらい、マルトを探す。そのうちマルトは男と逃げたことが分かるが、男はヤクザ者に追われていて……今までの生活が空虚な幻でしかなかったのでは、と思いながらもマルトを探すが……
 
 
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「カルディノーの息子」です(・∀・)
これ以来の「運命小説」です。ヤクザ者に追われている男と逃げたらしい妻を探す、謂わば残された男の物語です。その探している間、今までの生活が一気に幻のように感じられるその寂寥感が霧雨のように細かく静かに降ってくるところがシムノンらしい。
 
 
本書は「シムノン問答」というあとがきが付いていましてそこの話がなかなか興味深かったです。確かにメグレ物もそうですが、シムノン作品って主役以外の語りってないんですよね。主観的なんです。とても。主人公の精神がある出来事によって崩壊し、それによって新しい精神が生まれ、それを再発見する。確かにそれの繰り返しです。なるほどなぁと思いました。そしてシムノン作品はメグレ物以外は普通の探偵小説の先入観を捨てた方が良いとも書いていますが、メグレ物でも捨てた方が良いと思いました。
 
 
「カルディノーの息子」でした(・∀・)/
次は! ついに! あのシリーズの! 最終巻です!!(*^o^*)/~