泉鏡花 No.3◇歌行燈◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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芸で人を殺してしまった男、その男が舞を教えた新妓。行燈が照らす不思議な再会。

 
 

 
◇歌行燈◇
泉鏡花
 
 
私はね…お仲間の按摩を一人殺しているんだ。―寒月冴えわたる桑名の夜、流しの若き旅芸人が酒をあおり語り始めたのは、芸へのおごりが招いたある悲劇。同刻、近くの旅宿では、二人の老客が薄幸な芸妓の身の上話に耳を傾ける。揺らめく町の行燈。交錯する二つの場の語り。それらが混然と融合した時、新たな世界が立ち現れる。
 
 
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桑名。宿場に入った2人の老人は三味線も踊りもお酌も話もしない変わった新妓に出会う。話を聞くと彼女は本当にもなにもできない、なんでもするから帰さないで欲しいと泣きつく。哀れに思った2人は帰さず休ませて本当になにもできないのかと再三尋ねる。すると舞だけはできると答える。新妓は自分で謡って舞う。2人はその舞に覚えがあった。どういう経緯でそれを習ったのかを問う。
 
 
一方、饂飩屋には門附がやってくる。芸をしに来たのではなく、単純に饂飩を食べに来たらしい。そこに按摩がやって来て療治をしてくれる。按摩を見てその門附は言った。「おれはお仲間の按摩を1人殺しているんだーー」
 
 
芸妓の身の上話、門附の人を殺した経緯。2人の過去が繋がる時ーーー
 
 
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「歌行燈」です(・∀・)
前回に続き、鏡花第2弾。能、謡、芸妓等々、日本の芸術文化が登場します。鏡花は家族に能楽の名人がいたようでそちらにも関心を持っていました。本作はそれが行燈に照らされたように幻想的に描かれています。
 
 
本作は宿場、饂飩屋と語りが入れ替わり、一見無関係そうな出来事が代わる代わる語られます。それが繋がった時の感触は行燈が灯って景色が現れた時と似ています。
 
 
最後は三者が出くわし、舞を踊るところで終わります。舞を踊った後、三者はなにを思うのでしょう。またこの新妓の娘は喜多八が自殺に追い込んだ按摩の娘……らしいです。本ではそうは書いていないような……示唆か? 映像化もしていてそちらではそうなっているようです。
 
 
「歌行燈」でした(・∀・)/
次の作家は鏡花とは不仲だし、その名前に霞みがちだけど実はビッグなファンをお持ちな徳田秋聲氏です(*^o^*)/~