ジョルジュ・シムノン No.38◇家の中の見知らぬ人◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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徹底的に世間と人との関わりを絶った彼には一緒に住んでいる娘すら「見知らぬ人」ーーー

 
 

 
◇家の中の見知らぬ人◇ -
ジョルジュ・シムノン 遠藤周作 訳
 
 
温かな部屋と上等のブルゴーニュワイン、山のような蔵書。酔いどれ弁護士の優雅な隠遁生活を破った、驚くべき家の中の真実とは。92年3度めの映画化された作品の翻訳。激しい興奮を呼び起こしてくれる一冊。 
 
 
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夜中、ロジッサール検事は従兄弟エクトール・ルールサからの電話で起こされた。ーーーが、電話の内容は驚くべきものだった!
 
 
エクトール・ルールサは妻が男と駆け落ちして以来、人と世間と交流を絶っている弁護士だ。ある夜中、家の中で銃声を聞いた気がしたルールサは娘ニコルを尋ねる。ニコルは部屋からなかなか出てこなかったが、一緒に様子を見に行く。するとなんと屋根裏部屋で男が1人、銃で撃たれて死んでいた!
 
 
こうしてロジッサール検事は呼び出されたわけだが、調べれば調べるほどルールサにスキャンダルが。死んだ男は不良青年と評判の男でニコルとその友人たちはこぞってこのルールサ家を溜まり場にしていたのだ! しかも彼らはその事件当日飲酒運転で事故を起こし……
 
 
そのうちグループの1人が逮捕されるが、その青年エミールはニコルの恋人で……ルールサはその弁護を引き受けるが!?
 
 
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「家の中の見知らぬ人」です(・∀・)
予想以上にボロくて読むのが遅くなりました。読んでいる最中も塵に還りそうで別な意味でハラハラしました←
 
 
久しぶりのノン・メグレシリーズです。自分の家で見知らぬ人間が殺されているというショッキングな出来事から幕が開きます。
 
 
この「見知らぬ人」が自分の家のベッドで死んでいる男だけでないというところがミソです。
極端に交流を絶っていたルールサにとって外の他人はもちろん、女中も娘ですらどんな生活を送り、どんな考えを持っているか、今回の事件でなにも知らなかったことをこの上ない孤独と寂寥感の中で思い知らされます。こういうところがシムノンっぽい。
 
 
やはりシムノン作品の登場人物はどこか侘しさを感じさせます。みんな愚かで矮小で自己中心的で……でも灰色の冬の風に身を晒しているような侘しさと孤独を抱えて……
 
 
読んでいて自分の心にも冬風が吹いて来ますが、その空の雲に切れ目が見えたら少しでも救いがあるのでしょうか。
 
 
「家の中の見知らぬ人」でした(・∀・)/
次はーーーSFでショートショート!(*^o^*)/~