イーデン・フィルポッツ No.9◇医者よ自分を癒せ◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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2つ目の殺人事件の裏側で医者はどのように動いたか?

 
 


◇医者よ自分を癒せ◇ -Physician Heal Thysele-
イーデン・フィルポッツ 宇野利泰 訳
 
 
イギリス南部の風光明媚な町ブリッドマスの市長アーサー・マナリングが殺害された事件は、一大センセーションを巻き起こした。町の発展のために別荘地の開発に精力的に乗り出して財をなした不動産業者であると同時に、貧民対策事業に多額の金を投げうって賞賛を浴びているこの人物を、誰が、なぜ殺さなければならなかったのか? だが、人々の異常なまでの関心を事件に引きつけたのには、もうひとつ別の要素があった。それは、事件の有り様が、七年前のちょうど同じ日に起きた被害者の息子ルウパート殺害事件にあまりに酷似していたことだった。現場は、景勝地マッターズ沼地のまったく同じ場所、しかも左のこめかみから撃ちこまれた銃弾が頭蓋を通り抜けている点も同じだった。二つの事件を結びつけて考えないものはなかった。しかし、スコットランド・ヤードが七年前と同様、一番の腕利き刑事を派遣してあらゆる努力を続けたにもかかわらず、謎は再び未解決のまま残されてしまった。迷宮入りの二重殺人は永遠の謎を秘めたまま葬られようとしていた……だが、30年後、マックオストリッチ医師の手記が事件の恐るべき真相を白日のもとにさらけだす!
『赤毛のレドメイン』『闇からの声』と並び、大作家フィルポッツの代表的ミステリ。格調ある文体で悪の心理を容赦なく追求する心理ミステリの傑作。
 
 
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ブリッドマスのマッターズ沼地で不動産業者マナリングの息子ルウパートが殺害された。ルウパートは軍人で人気者で殺害の動機を持つ者は皆無だと言ってよかった。スコットランド・ヤードは腕利きの刑事も利用するが、事件は迷宮入りになる。
 
 
ブリッドマスの開業医マックオストリッチ医師はマナリング家に訃報を届けた縁でマナリング家と関わることになる。そこの娘シシリイに恋したマックオストリッチは愛とやがて彼女が受け継ぐはずであろう遺産獲得のため、着々と親しくなる。
 
 
マックオストリッチはルウパートの父親マナリング氏が必ずしも皆が言うほど善人ではなかったことを知ることになる。関われば関わるほどマナリング氏の性格が不愉快に感じてくる。マックオストリッチのそれはシシリイと結婚した後、決定的になる。
 
 
「慈善事業に精を出すマナリング氏と軍人である息子ルウパートは根本的に性格が違う。もしかしてマナリング氏がルウパートを殺したのではないか?」
マックオストリッチの胸中に恐ろしい計画が浮かび上がる……
 
 
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「医者よ自分を癒せ」です(・∀・)
フィルポッツ、第2弾。今回は特定の探偵もおらず、ある医者の手記からおそるべき真実が浮かび上がる……という話です。
「お医者さんの手記……はて、どっかで読んだような。わかった、アレだ」
読んでいる間ずーっと胸中はその疑惑でいっぱいでした。そして最後の最後で後味が激変します。
 
 
さてその問題の語り手はマックオストリッチという変わった名前のお医者さん。リューマチが専門です。この医者が結構癖がある人物です。ものすごく利己的で野心的です。かなり裏表のある人物です。そしてフィルポッツが時々論じるある意見の持ち主でもあります。
けれどおいおいおい……誰も救われてないじゃないか! マックオストリッチの自己合点で運命が皮肉った方向に……! シシリイがひたすら可哀想です。
 
 
けれどマナリング父子の殺害についてここまで動機がない人なんていないだろう……と最初から思っていました。事実その通りで誰も彼もが保身のために口をつぐんだわけでなんか現在の閉鎖的・消極的社会を垣間見た気がして怖かったです。
「あの典型の手記でしょ」と思ったそこの貴方、一読をお勧めしたいと思います。
 
 
「医者よ自分を癒せ」でした(・∀・)/
次こそお待たせいたしました! シムノンです(*^o^*)/~