イーデン・フィルポッツ No.8◇溺死人◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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単純な自殺事件と思われたが……!?

 
 

 
◇溺死人◇ -Found Drowned-
イーデン・フィルポッツ 橋本福夫 訳
 
 
ダレハムの海岸で男の溺死体が発見された。その六週間前、自殺すると言って姿を消した一人の旅芸人がいた。当然、人生に絶望したその青年の死体と思われたが、死因に疑問を抱いた医師メレディスが、友人の警察署長フォーブズの許しを得て独自の捜査に乗り出す。単なる自殺と思われていた事件に隠された真相とは? 『赤毛のレドメイン家』のフィルポッツが贈る傑作長編推理小説。
 
 
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引退した医師メレディスと警察官フォーブズの犯罪学の語らいの最中に行方不明になっていたバンジョー弾きの遺体が見つかったと報告が入った。このバンジョー弾きは自殺すると言って6週間前から姿を消していたのだ。
 
 
そのバンジョー弾きジョン・フレミングは恋人からフラれたと悲観して自殺したと思われ、検死審問でも自殺と断定された。だが、医師のメレディスは遺体の身体的特徴がフレミングのものとは思えず……
 
 
メレディスはフォーブズら警察の助力無しで生きているかもしれないフレミングを探し出すことを決意する。するとフレミングは本当に生きていた。彼が自殺しようとくだんの海岸に行ったら既に死体があり、心機一転、生まれ変わるために服をすり替え、そのお金を失敬した……
 
 
フレミングが生きていたとなるとあの死体は一体誰だ? メレディスは財布のイニシャルと行方不明者リストからダニエルという骨董商に行き着く。今度は殺人も絡み、メレディスはますます事件にのめり込んでいくが……
 
 
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「溺死人」です(・∀・)
本当は循環通り、シムノンだったんですが、次読む「家の中の見知らぬ人」が予想以上にボロくてブックカバーにつけた途端、表紙と本が分離しました← 糊付けが必要になって急遽フィルポッツです。それが一昨日のことでしたが、これを書いている最中に今度は裏表紙が崩壊しました。ナンテコッタ。
 
 
そんなわけで「溺死人」。自殺事件と思いきや実は! な話です。とはいえ「自殺ではなく、殺人だった」ではなく、すり替えかもしれないと行き着いて、実はそれはゴールではなかった。という二重三重に仕掛けがあります。
これに挑むのは引退した医師メレディス。まさかの警察の助け無しで1人で捜査します。……
 
 
読みながら「実はメレディスが犯人だったらどうしよう?」と思っていましたが、最後が強烈でした。犯人じゃなかったけど! いや! ある意味犯人かも! それで良いのか。
しかも友情にも亀裂が入り、フィルポッツ作品あるある「警察官が悲惨な目に合う」に当てはまってしまいました。
結末はこの話の土台になっている死刑論、社会論、犯罪論から導き出したフィルポッツの「結論」だと言える気がします。ちなみにこの犯人の動機はクリスティー女史もポアロを通して論じています。クリスティーは「全ての人は他人から命を奪われない権利がある」と論じる一方で……
読んでいてフィルポッツは長編向きの作家だと思いました。
 
 
「溺死人」でした(・∀・)/
先述した通り、シムノンが予想以上に崩壊したため補強工事に入ります。そんなわけで次もフィルポッツです(*^o^*)/~