F・W・クロフツ No.25◇山師タラント◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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詐欺で成功者になろうとした男の末路はーーー殺人による死。しかし逮捕された女は本当に犯人なのか?

 
 
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◇山師タラント◇ -James Tarrant, Adventurer-
F・W・クロフツ 井上勇 訳
 
 
野心家ジェームズ・タラントは、詐欺同然の方法で、しがない薬局の店員から一躍成功者に成り上がった。しかし、彼の行く手には死が待ち受けていた……! 事件を担当するのはわれらがフレンチ首席警部。犯人の女性はあっけなく逮捕され、今や絞首刑の寸前にある。だが、フレンチは自らの捜査に不満を抱いていた。クロフツの作品中では異色の法廷論争を展開する重厚な本格長編!
 
 
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ジェームズ・タラントは野心家だった。既出の薬品を詐称し、売ることで成功する。一時は大元のブラクサミン会社にバレて店を畳むが、その会社の重役になったところで性懲りもなく、また同じことを始める。
 
 
タラントにはマールという協力者がいた。彼女はタラントには恋し、後ろ暗いところに良心の呵責を感じながらも、自分と結婚してくれることを信じて協力していた。しかし彼にはそんな気はなく、社交界の名高い令嬢との婚約を発表する。裏切られた彼女はヒステリーを起こす。マールに恋するテンプルはタラントに激怒するも、マールの激情に不安を感じる。
 
 
しかし婚約した直後、タラントは殺される。フレンチ警部はタラントが山師であることを知る。調査の末、殺人容疑でマールを、事後従犯容疑でテンプルを逮捕するが、決定的な証拠がなく……果たしてマールは本当に犯人なのか?
 
 
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「山師タラント」です(・∀・)
本書は詐欺で成り上がろうとするタラントの人生を描いた前半と殺人と逮捕後の裁判の後半の2部構成に分かれていますが、このタラントの人物描写と成り上がるまでの足跡が面白い。
女性には魅力的な野心家、そのためにはテニスや釣り等といった社交界の勉強も怠らない男。頭も悪くないし、成功者になろうと奮闘するところはただ悪党と因果応報的殺人被害者と片付けるには惜しいと思うところがあります。稀に見る卑怯者タラントを主人公に一本書けたと思います。大河小説とか、企業小説とか。フレンチ警部出さないで、挫折と死で幕。
 
 
タラントが結構面白い人物だったのでマールとテンプルがかなり平々凡々に見えました(苦笑) 「ああ、推理小説でよくいるよね」って感じ。2人とも自ら墓穴掘ってしまうし、危なっかしいことこの上ない。
 
 
フレンチ警部も最初は良かったですが、最後の最後で躓きましたね。最近失敗しなくなったと思ったのに← しかしこれは裁判が始まって「もうどうしようもない」と思ったフレンチ警部の諦めが躓かせたわけで「いや! 決定的な証拠が出るまで諦めるものか!」ともうひと頑張りしていたら違った可能性もあるので(だって目撃者いたし)、やっぱりフレンチ警部には猛省して貰わないといけませんね。事件の最大の功労者はテンプルかもしれませんね。
 
 
「山師タラント」でした(・∀・)/
次はクラークの人生を振り返ってみます(*^o^*)/~