F・W・クロフツ No.22◇フレンチ警部と毒蛇の謎◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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あてにしていた金の消失は、後戻りできぬ犯罪への道しるべーーー倒叙と推理と犯罪のフルコース!

 
 
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◇フレンチ警部と毒蛇の謎◇ -Antidote to Venom-
F・W・クロフツ 霜島義明 訳
 
 
私はジョージ・サリッジ。仕事はともかく家庭に満足しているとは言えない。だから博打に入れあげることにもなった。運命の女性ナンシーに逢った今や、二重生活を支える資金も必要だ。だから”叔母の遺産で万事解決”の皮算用が吹っ飛んだ衝撃といったらなかった。あげく悪事のお先棒を担がされ、心沈む日々。しかも、事故とされた一件をフレンチという男が掻き回している……。
 
 
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バーミントン動物園長サリッジの夫婦生活はうまくいってない。つまり家はストレス生産場なのだ。ストレスを発散するのに博打が選ばれ、さらに愛人ナンシーになった。サリッジはコテージを買い、そこに彼女を住まわせた。つまり金がより必要になってきた。
 
 
博打は弱くないし、ツテは返せる。それよりもサリッジには心強い拠り所があった。健康を害して長くない叔母の遺産8000ポンドだ。これさえあれば夢の二重生活も可能だ! さぁ、叔母は死んだ! ーーーと思いきや財産管理をしていたキャッパーによって全て横領され、すられてしまった!
 
 
怒り狂うサリッジにキャッパーは話を持ちかける。キャッパーはお金に困っている。サリッジは動物園の毒蛇を研究に使っているバーナビー博士と懇意にしているが、彼の人はキャッパーの叔父さんである。彼は最近娘を亡くして正気を失い、その叔父は裕福。そしてキャッパーはお金に困っている。
 
 
サリッジはキャッパーの犯罪に加担する羽目になってしまった。動物園の毒蛇をこっそり拝借して毒を手に入れてーーー果たしてバーナビー博士は死に、事故死と相成ったと思われたが、意外なところで事件の疑いが!?
 
 
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「フレンチ警部と毒蛇の謎」です(・∀・)
倒叙ものです。前半はサリッジの果てしない欲望とその対価、後半は犯罪に加担してしまうことによる破滅的顛末が描かれています。
犯罪に走る人ってみんなそうだけどやってしまってから大事なものに気づきますよね……話し合って、遠い過去の彼方に失われたものを取り戻すことだってできたのに……サリッジ……
 
 
そんなサリッジよりも弁護士キャッパーの方が悪党だ! お前、人の遺産に何手ェつけとんじゃ!!←  いけしゃあしゃあと……とまぁ、立派な悪党でしたが、最後には良心が残っていたようです。
 
 
そしてフレンチ警部。まさかの身内登場! 事件関係者、つまり動物園員の兄弟がフレンチ夫人の義弟という親戚から事件の話を聞くことに! クロフツものでは初めてのパターンです。フレンチ警部も義弟の話がなかったら事件の存在を知らなかったわけで、真の貢献者は義弟のアーサーかも!?←
 
 
フレンチ警部、アーサーご持参の新聞から事件の香りを嗅ぎ撮り、毒の注射方法から犯人ーーー特にサリッジの摘発まで冴えています。ここまで冴えているのは久しぶりかもしれません。フレンチ警部の捜査シーンは多くないですが、順調に手がかりを獲得するところは気持ちが良いです。それにしても凶器、よくできていますよねぇ。絵あるけど。跡とか最初は専門家すら騙せたわけで、だんだん犯人も頭脳的になっています。
 
 
事件の流れもよくできていて、被害者の娘の事故死、半年前に解雇した警備員等、一見無関係な出来事が上手く、自然に事件を構成しています。
 
 
「フレンチ警部と毒蛇の謎」でした(・∀・)/
次はまたルメートル作品、カミーユ3部作、ついに完結(*^o^*)/~!