恩田陸◇蜜蜂と遠雷◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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蜜蜂の到来はギフトか? 災厄か? 音楽の神様がピアノ国際コンクールで待っている。

 
 
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◇蜜蜂と遠雷◇
恩田陸
 
 
私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った青春群像小説。著者渾身、文句なしの最高傑作!
 
 
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破天荒な演奏をしたその少年はかつての巨匠の弟子だったーーー審査員らは嫌悪しつつも少年の演奏に圧倒的技量を感じ、芳ヶ江国際コンクールのエントリーを認める。
 
 
少年はその巨匠ホフマンの挑戦状だった。彼は災厄にもギフトにもなり得る。行先は審査員、三枝子らにかかっていた。
 
 
養蜂家の息子、風間塵は芳ヶ江国際コンクールで他の出演者たちにどのような影響を与えるのか。そして塵はどこまで行くのか。塵は亡き師匠から託されたある使命があった。
 
 
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「蜜蜂と遠雷」です(・∀・)
出版界の流行に乗った……だけじゃないんですが、先に読んだ母が「良かった!」と絶賛&勧めるし、自分もかつては音楽ーーー作曲を勉強していたので親近感もあって読んだ次第です。
 
 
なんだこれ、凄い。
最初は破天荒天才型少年、風間塵の話かと思いきやステージをドタキャンした元天才少女、華やかスター青年、1度は諦めたもののもう一度コンクールに立つことを決めた28歳の古株の4人の葛藤、感情、音楽を聴いた時の心情が分かりやすい言葉で、しかしあますところなく描いています。
読んでいてこんな青春音楽ストーリーを待っていたのかもしれないと思いました。ただキラキラしているんじゃなく、しかし暗いところはなく。
 
 
蜜蜂王子こと誰よりも何よりも自由で独特な塵君は次元が違いすぎますが、1番共感できたのは元天才少女の亜夜と28歳の古株、高島さんですかね。
 
 
わたしは天才ではないので亜夜で共感したのは「音楽はいなくなったんじゃない、わたしが逃げたのだ」、「神様はずっとここにいた。わたしの中に」と悟るところです。
わたしは世間でやっていけるほどの技術力がないと悟って音楽の道を諦めた1人ですが、これを読んだ瞬間、「もしかしたら、違ったのかもしれない」と思いました。
亜夜は塵くんとは違う意味で天才で異次元的です。この2人、似ています。音楽で会話するシーンは実際はあり得ないけど、わたしにも覚えがあります。音楽をやると会話するよりも相手が分かったりしたものです。
ジュリアード王子様マサルのロマンスがあっさりしていたのが嬉しかったり。ここまで音楽と個人を描くならそういう恋愛面はただ邪魔なだけです。
 
 
高島さんには全体的に共感できました。1度は諦めた道。心の中でずっと渇望していた場所。そこに再び立てたことの緊張と認められたことによる喜び。そして続く次の道ーーー高島さんを素直に応援したい←
 
 
しかしつくづく思うけどコンクールって残酷ですよね……そこで入賞しないとプロとしてはやっていけないし、審査員の好みもあります。厳しい世界。コンクールは無慈悲でもあります。今まで審査員という存在には警戒心ばっかりでしたが(吹奏楽コンクールの経験上)、審査員も1人の音楽家であり、音楽の一ファンなんだなと思いました。
 
 
 
さて、作品中で「音楽コンクールと小説の新人賞は似ている」旨のセリフがあります。うん。確かに。今やたくさんあるし。新人を発掘するのは後世に継承するための義務ですからね。
 
 
しかし類似点はそこだけで音楽と文学は決定的に違う点がいっぱいあります。
 
 
音楽は「飛ぶ」、文学は「走る」。
亜夜ちゃんと塵くんが音楽を通して会話するシーンが何箇所かありますが、音楽を奏でたり、聴いていると心はどこか別の場所や未知の世界にすっ飛んでいく錯覚を覚えます。白昼夢ってやつです。わたしも曲を作る時、心はどこか遠い別の世界にいる気がしました。少なくともピアノの前にはいない。というか。
文学は人間の言動と感情が文字になっています。文字が読めれば一目瞭然。直接的。自分と重なるところもあります。本の形をした作者と向き合って、共通点を見つけようとしているような。そんな感じ。読んでいる時は対談しているか並走している。
 
 
また、音楽はなにを思ってもいい。
作曲者や作曲の意図はもちろんのこと、そこから宇宙のことを考えてもいい、進化のことを考えてもいい。昔を顧みてもいいし、未来を思い浮かべてもいいし、夢を見てもいい。でも文学ってそうじゃない気がします。
音楽は言語が分からなくても理解し合えるという点で最強です。音楽で戦争を止められる日が必ず来ると思います。
 
 
色々な点を含めて読めてよかったです。本当に。
 
 
「蜜蜂と遠雷」でした(・∀・)/
次はクラーク、「遥かなる地球の歌」です。マークⅡの方ね!(*^o^*)/~