アーサー・C・クラーク No.22◇楽園の泉◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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地球と宇宙を繋げるエレベーターを創設するーーーそれは1人の男の信念を賭けた、一生の闘い。

 
 
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◇楽園の泉◇ -The Fountains of Paradis-
アーサー・C・クラーク 山高昭 訳
 
 
赤道上の同期衛星から超繊維でできたケーブルを地上におろし、地球と宇宙空間を結ぶエレベーターを作れないだろうか? 全長四万キロの〈宇宙エレベーター〉の建設を実現しようと、地球建設公社の技術部長モーガンは、赤道上の美しい島国タプロバニーへとやってきた。だが、建設予定地の霊山スリカンダの山頂には三千年もの歴史をもつ寺院が建っていたのだ……みずからの夢の実現をめざす科学者の奮闘を描く巨匠の代表作
 
 
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ロケットではなく、エレベーターで宇宙と地球を行き来できないだろうか? 定位置衛星としてそこからケーブルをおろし、そこから人とものの行き来を可能にする〈宇宙エレベーター〉を創ろう。技術部長のモーガンは早速計画に着手するが、問題があった。
 
 
宇宙エレベーターの建設予定地は美しい島国タプロバニーの霊山スリカンダ。ところがそこには3000年の歴史を誇る寺院があり、寺院の僧侶たちは首を縦に振らず、出ていこうとしない。ーーーが、古の伝説によって事態は一変する。
 
 
なんとか宇宙エレベーターの構想が実現するが、火災と爆発事故により宇宙空間で一行が孤立してしまう。モーガンは救出にあたるが、モーガンの命は風前のともし火だった……
 
 
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「楽園の泉」です(・∀・)
 
 
「地球港」ならぬ宇宙エレベーターの話です。表紙のピンクのラインです。宇宙エレベーターの構想はクラーク以前からあったようで、ソ連のアルツターノフを始め、複数の人が1960年代にかけて発表したようです。
 
 
〈宇宙エレベーター〉か〜。ロケットよりも気軽に宇宙に行けるんですね。地球からじわじわと宇宙に行くのはゾクゾクしますね。
 
 
最初〈宇宙エレベーター〉と聞いて半分ファンタジーの世界なんじゃないか? と思いましたが、いざ読むと〈宇宙エレベーター〉に関する科学技術が豊富でやっぱりSFだと思いました。それどころか、解説を読むと「材料さえあれば理論的には建設可能」に噴きました。本当か!?
 
 
本書はそのSF要素満載の〈宇宙エレベーター〉とクラークが後年愛したスリランカを土台に、その宇宙エレベーターの建設に命を賭けた1人の男の物語です。
 
 
エレベーター建設予定地タプロバニーのスリカンダはクラークと縁が深いスリランカがモデルです。それだけならまだしも、仏教や僧侶、王様の伝説が随所随所に登場して科学と精神の世界が垣間見得ます。
後半は影を潜めますが、エピローグで異星から無人探知機スターグライダーを送ったスターホルム人との対話で無視できない存在感を発揮します。
 
 
後半はなんといってもモーガンの奮闘です! 宇宙空間に助けに向かうモーガンの奮闘は息を呑み、手に汗を握るほど緊張感があります。最後、地球に独りで帰るところのシーンが本当に切ないです。
 
 
実現できそうなワクワクする要素と1人の人間の骨太なドラマ。本書はその2つにおいて傑作だと思います。
 
 
「楽園の泉」です(・∀・)/
次はエラリー、だんだんラストスパートをかけます(*^o^*)/~