尾崎紅葉 No.1◇金色夜叉◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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そして男は愛を捨て、金だけを信じる夜叉になったーーー 金に翻弄される男女の愛憎!

 
 
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◇金色夜叉◇
尾崎紅葉
 
 
美貌の鴫沢宮をカルタ会で見初めた銀行家の息子富山唯継は、宮に求婚し、その代償として宮の求婚者間貫一を外遊させることを宮の両親に誓う。熱海の海岸で、許婚者の宮の心が金持ちの他の男に傾いたことを知った貫一は、絶望の余り金銭の鬼と化し高利貸しの手代となる……。雅俗折衷の絢爛たる文体で明治の世相を大きく截斷した本編は、紅葉文学の集大成であり、明治文学を代表する一大ロマンである。
 
 
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「文豪ストレイドッグス制覇計画」、5巻に入りました(・∀・) 5巻は鏡花ちゃんの初仕事から始まりますが、その仕事の帰り道に敦くんが夜叉白雪の奇襲を受けるところで話ーーーバトルの火蓋が切って落とされます。
 
 
鏡花ちゃんに電話をかけた相手が今回制覇する相手です。
 
 
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「尾崎紅葉」です。ね、艶やかな人でしょ(笑)
着物を美しく艶やかに着こなし、言葉遣いは遊女風。いやー、花魁ですね!← 「姐さん!」と呼びたいぐらい頼もしい女の人です。武装探偵社での与謝野先生ポジションですね。
 
 
紅葉姐さんは史実の「尾崎紅葉」と似たところが多いです。性格も若いうちから親分気質、激情しやすい、弟子の「泉鏡花」をことさら可愛がるetc……
 
 
紅葉姐さんは森さんの武装探偵社殲滅命令を次いでに可愛がっていた鏡花ちゃんを連れ戻しにかかります。闇に生まれた者は闇にしか生きられない、光の世界で希望を見出してそこで絶望するぐらいなら、と説得にかかります。それでも鏡花ちゃんが武装探偵社に入社したときは彼女なりに祝います。故に彼女の愛情は本物です。
 
 
かつて紅葉姐さんもポートマフィアから抜けて表の世界へ生きたいと願った過去がありました。14歳の時、慕っていた男性とポートマフィアを抜けようとしましたが先代首領に露見し、その男性は殺されてしまいました。それ以来、ポートマフィアを恨んでいます。
 
 
……ここでちょっと疑問が。
紅葉姐さんの異能力は「尾崎紅葉」の代表作たる【金色夜叉】。鏡花ちゃんと同タイプ。マントと髪のオールバックと仕込み杖が特徴、そしてこちらは【自分の意志で操作できる】。……
「それなら【金色夜叉】召喚して先代の追っ手を振り払うことができたんじゃ?」と思ったんですよ。それに組織抜け出しに失敗したらそれ相応のペナルティがあることは承知していたはずです。それなのに先代を、ポートマフィアを恨むかな。
 
 
考えられる可能は3つ。
1.先代の異能が【異能力無効化】、または【異能力の操作権を(一時)奪う】ものでそれによって夜叉を操れなくなり、それが組織の抜け出し失敗、男性の殺害に繋がった。
2.男性が殺された際、紅葉姐さんは助命されるが、ポートマフィアが戦闘に秀でた夜叉の異能力を必要としていたから。
3.今でこそ夜叉は自力で操れるが、当時は操作が不十分で戦力を発揮することができなかった。
 
 
1は想像の域が広すぎますが、2と3は限りなく正解に近い気がします(自信満々に言っといて大外れだったらただの大馬鹿ですが)。
特に2が正解だとすれば5巻での「異能目当ての屑共」の意味が合点がいくのです。鏡花ちゃんの意思を無視して【夜叉白雪】を使われる様がかつての紅葉姐さんとダブって見えたのでしょう。
3は9巻での森さんの台詞から「今は、ってことはじゃあ昔は?」と考えて仮説を立てました。ただ異能の定義が分からない以上、これ以上の考察は無理です←
2に関しては紅葉姐さんが組織を抜け出そうとしたのは男性が唆したから。も考えました。9巻での台詞を見ると男性は表の世界をよく知っていたようなので。
でもどうやって出逢ったんでしょう。気になるところです。こういうところを小説でやればいいのに……
 
 
ポートマフィアを恨んでいる姐さんが「今のポートマフィアは気に入っている」のはあの人の仇である先代を森さんが討ってくれたからだと思います。
 
 
「文豪ストレイドッグス」の話がもんの凄く長くなりましたが、異能力【金色夜叉】を「尾崎紅葉」を交えてご紹介します!
 
 
尾崎紅葉は本名を尾崎徳太郎と言い、若くして文壇の頂点に立ち、多くの弟子を育てていました。その筆頭が泉鏡花。他には徳田秋聲、小栗風葉がいます。
 
 
「金色夜叉」は外国の小説「女より弱き者」からヒントを得、読売新聞で連載していた当時からとても人気がありました。話は知らなくても「月が曇ったら〜」の言葉や熱海での貫一と宮のシーンは知ってる! って方も多いんじゃないでしょうか。石像にもなっているぐらいだから。
 
 
貫一による蹴り飛ばしシーンはなんと紅葉本人よる実話。貫一のモデルになった人は婚約破棄されても気にしなかったのに友人の紅葉の方が激怒して相手の女の人を蹴り飛ばしたのが元になったそうな。おいおいって感じですが、「てよだわ言葉」を批判したり、泉鏡花の同棲を非難したり、紅葉さんってもしかして頭の固いタイプだったんでしょうか??
 
 
鏡花の同棲を非難するところは「文スト」で鏡花ちゃんと一緒にいる敦くんを攻撃するところとダブルような。鏡花ちゃんを手に入れるには紅葉姐さんをまず説得しないといけませんね。頑張れ、敦くん←
「文スト」の尾崎紅葉は史実とも貫一ともリンクしていてキャラ作りがよくできているなぁと思います。
 
 
「金色夜叉」は金によって愛情が裏切られ、それなら金一筋で生きてやると人を捨てて夜叉になった男の愛憎劇です。金のために宮と鴫沢家は貫一を裏切りますが、宮は富山を愛することができず、結局宮の寿命を削る結果になってしまいます。
愛情だけでは生きてはいけないが、金が勝つのはほんの一時だと謳っている気がします。
 
 
貫一が冷酷で悪役なのにてんでそんな感じがしません。むしろ同情してしまって何も言えません。それに宮を頑固に許さないところになぜか人間の心を感じたのは自分だけでしょうか。許すも許さないも人間だけが持てる感情だからじゃないでしょうか。
 
 
「金色夜叉」は作者急逝のため未完で、病気になった宮が会いに来て欲しいと手紙で何度も懇願するところで話は終わります。
なんてところで終わったんだ! と身悶えしそうですが、紅葉のプロットだと「貫一は高利貸しで得た金を全て人を助けるために使い果たす」となっていたそう。さらに断片整理すると「宮は発狂し、とうとう捨てられる。貫一はそこでやっと宮を許し、その身柄を引き取り、高利貸しを廃業する。その際、友人荒尾の借金を代わりに返し、荒尾はそれを後で知る」という筋になるのが勝元清一郎による「金色夜叉腹案各書」です。
 
 
紅葉が亡くなってどうするつもりだったかは本当の意味で知ることはもうないですが、確かに上記通りに進めるつもりだったんじゃないかなと思いました。
鰐淵の息子の「真人間になってください」から始まり、満枝と宮が迫り、宮が自殺するあの夢で口走った赦しの言葉、狭山と静の救出、そして最後の手紙の開封には確かに貫一は夜叉から人間に戻っているからです。徐々に人間の心を取り戻しているのです。
それにそもそも赦すつもりでなきゃ、例え夢であっても赦すと言わなかっただろうし、手紙も開いたりしないでしょう。と思うのです。
 
 
未完によって2人の結末は永遠に分からなくなってしまいました。意に沿わない話を作ると紅葉は天国で怒りそうですが(蹴飛ばされるかもしれません←)、許してくださいませんか、先生。上記のことを思ったっていいじゃないですか。せめて夢の中だけでも。何事も決着をつけさせてあげたいじゃないですか。
 
 
「金色夜叉」でした(・∀・)/
次回から通常通りの読書の輪! クロフツに戻ります。フレンチ警部入りまーす(*^o^*)/~