ジョン・ディクスン・カー No.56◇血に飢えた悪鬼◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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その館には「血に飢えた悪鬼」が彷徨っているーーーすれ違いと不可解でこんがらがった紐を解くのはウィルキー・コリンズ!

 
 
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◇血に飢えた悪鬼◇ -The Hungry Goblin-
ジョン・ディクスン・カー 宇野利泰 訳
 
 
九年ぶりに帰国した青年キット・ファレルは、再会した友人から妄想としか思えぬ奇怪な相談を受ける。直後、友人は凶弾に倒れるが、密室の中から犯人は忽然と姿を消していた。この謎に挑戦するのは、推理小説の古典として名高い『月長石』の作者、ウィルキー・コリンズ!
ヴィクトリア朝のイギリスを舞台に描かれる、謎と怪奇に満ちた歴史ミステリ。ディクスン・カー、最後の長編。
 
 
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帰国した彼を待っていたのは不可解とトラブルの連続。
 
 
ニューヨークからロンドンに9年ぶりに帰国したキットはアメリカで別れて連絡の途絶えてしまった恋人パットを見かける。さらに友人ジムも見かけるが、彼もキットを無視して行ってしまう。
 
 
キットはパットと話す機会を得るが、彼女の行動はどうもおかしい。どうやら何か秘密を隠し持っているようで……
 
 
おかしいのはキットの友人で探検家ナイジェルの相談も奇怪だった。ナイジェルにはミュリエルという美貌の妻がいるのだが、そのミュリエルが別人ではないかと疑っているのだ。
 
 
そんな馬鹿な……と疑うキットだったが、ユドルフォ荘の温室でナイジェルが何者かに撃たれてしまう! 命は取り止めたが、顔は分からず、中は密室。犯人はどうナイジェルを狙ったのか?
 
 
パットとジムの不可解な行動、ナイジェルが狙撃事件の謎、キットが狙われた理由とは? この事件を解くのはかのウィルキー・コリンズ!
 
 
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「血に飢えた悪鬼」です(・∀・)
ディクスン・カー最後の作品にして遺作です。
「え、もう最後なの!? 嘘でしょ!?」って感じです。
 
 
本作の舞台は1869年のロンドンです。おお? 最後の最後でロンドンが舞台になりました。遺作となったからにはこれもアメリカで書いたものですが、死ぬ前に1番好きだった英国を舞台にした作品を書きたかったんでしょうか。「最後の作品になるならおれのやりたいことを全部書いてやる!」 みたいな←
本当に古き良き英国が好きだったんだなこの人……
 
 
これもやりたい1つだったんでしょうか。ウィルキー・コリンズを探偵役にする。あの「月長石」で名高いあのウィルキーがカー作品に登場(表紙の顎髭の男です)! しかも探偵役! うーん、気になりますねぇ。
そうだ、最終章でコリンズ自身による「月長石」ネタバレ付き解説を論じていますので飛ばして読みましょう。じゃないと楽しみが半減しますよ!
 「月長石」を読むこともお勧めします! 分厚いけどね!←
 
……ちょっと役不足じゃない?
せっかくコリンズ出したんだから殺人事件の謎を解かせたら良かったのに……それも連続殺人← カッフ巡査部長も殺人事件は調査していないからなんだろうけど今ひとつパッとしないなぁ……第一キットという語り役がすでにいるのも原因なのかな。ここは1つコリンズ1人を主人公にしたらよかったと思います←
 
 
そして。
こんな都合よく上手くいくわけあるか!
偶然そうなったにしても1000分の1未満の確率だし、上手くいきすぎ! こんな簡単に他人を欺けるわけがない! 人も騙しているし、これはちょっと……結末がこう行かなかったらどうするつもりだったんだ……この人の漢気に乾杯!←
 
 
パットについては……これ、どこかで聞いたことあるような動機だなぁと思いましたが、あれだ。あのドラマだ。勿体ぶる暇あったら言っちまえよ! って感じですが、舞台が1869年ということを忘れていました。その割には斬新なことをやらかした方々もいますが← パットの問題はまた違うから。
 
 
「血に飢えた悪鬼」でした(・∀・)/
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そんなわけでディクスン・カーを全部読破してしまいました。
最初読んだ「夜歩く」が2015年の2月7日の更新だったので1年9ヶ月ちょっとの付き合いでした。クリスティーに次ぐ長さです。
 
 
読む前に抱いていたわたしのディクスン・カーは怪奇と猟奇と不可能犯罪がものをいう作品を書く。そして恋愛要素は皆無。というイメージしかありませんでした。
 
 
いや、それも当たっているけど! それだけじゃなかった。
確かにバンコランにはびびらされたけど、H.M卿が毎回やらかすハプニングには爆笑だったし、フェル博士がいればそれだけでホッとできたし、各キャラクターの恋愛模様にはらはらしたり、「なんだ、ディクスン・カーって笑えるところもあるし、気を抜けるところもあるんじゃん!」と思ったものです。
 
 
その一方でトリックの1つ1つに感嘆したり、「そんな馬鹿な……」と唖然とさせられたり……カーの色々な面を見ることができて、先の先入観を正しく捨てられたことは大きかったです。
 
 
カーのミステリーは直球的にも変化球的にも歴史を作りました。わたしはその歴史に感嘆、驚嘆しつつも今の世界を見据えてまた新しいミステリーを書きたいです。
 
 
「わたしは貴方の10分の1も知らなかった。読んだ今でも完全に分かったとは言えないが、10分の7ぐらいは理解できたと思う。先生。長い講義、本当にありがとうございました」
 
 
不可能犯罪の巨匠、ジョン・ディクスン・カーに乾杯!
 
 
ーーージョン・ディクスン・カー著、小説読破達成。
2016年、11月24日。