悪魔アザゼルと人間ジョージの誰も幸せになれない人助けの物語。
◇小悪魔アザゼル18の物語◇ -Azazel-
アイザック・アシモフ 小梨直 訳
アザゼルがね、とジョージが話し出した。絶対秘密だけど、奴は親しくしている悪魔なんだ。身長２ｃｍのチビだけど、人が、いや悪魔が好くてね、困っている友達の願いを何回も叶えてくれた。女の子を美人にしたし、刑事に嘘を見抜く力を与えた。科学狂の運ちゃんに空を飛ばせたこともある。でもなぜか皆幸せにならないんだ……。著者の友人ジョージが語る奇想天外なエピソード18編。
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1.身長2センチの悪魔
(The Two-Centimeter Demon)
……ジョージはひょんなことから悪魔アザゼルと出会ったジョージはアザゼルを使ってとある青年をバスケットボールのスター選手にしようとするがーーー
2.一夜の歌声
(One Night of Song)
……ジョージはアザゼルを使って友人の「お返し」の手助けをするがーーー
3.ケヴィンの笑顔
(The Smile that Loses)
……ジョージはアザゼルを使ってロージーのために夫の笑顔の写真を作ってみせるがーーー
4.強い者勝ち
(To the Victor)
……ジョージはアザゼルを使って友人テオフィルスを魅力的な男に仕立て上げたがーーー
5.謎の地響き
(The Dim Rumble)
……ジョージはアザゼルを使って地鳴りを通してセーザーで地球滅亡を解く男の記憶を抜き取るがーーー
6.人類を救う男
(Saving Humanity)
……ジョージはアザゼルを使っていく先々でゴタゴタを引き起こす男の「ドジ」を治したがーーー
7.主義の問題
(A Matter of Principle)
……ジョージはアザゼルを使って小説家で歴史に確固たる足跡を残したいというゴットリーブの願いを叶えたがーーー
8.酒は諸悪のもと
(The Evil Drink Does)
……ジョージはアザゼルを使って男が寄り付かない魅力的な女性にお酒の味を教えたがーーー
9.時は金なり
(Writing Time)
……ジョージはアザゼルを使ってせっかちなモルデガイ・シムズのために執筆時間を「増やした」がーーー
10.雪の中を
(Dashing Through the Snow)
……ジョージはアザゼルを使って厳冬の間でもセプティマスの別荘へ行けるように軽々と雪の上を歩けるようにしたがーーー
11.理の当然
(Logic is Logic)
……ジョージはアザゼルを使って話のつまらないアリステアのために言うことやることを面白くさせたがーーー
12.旅の速さは世界一
(He Travels the Fastest)
……ジョージはアザゼルを使って愛人フィフィの夫を旅行好きにさせたがーーー
13.見る人が見れば
(The Eye of the Beholder)
……ジョージはアザゼルを使って夫のために見た美しくなりたいというマギーを美しくさせたがーーー
14.天と地と
(More Things in Heaven and Earth)
……ジョージはアザゼルを使ってCDRの会長に就任したら最後1年後に死ぬかもというヴィサリオンのジレンマを解消したがーーー
15.心のありよう
(The Mind's Construction)
……ジョージはアザゼルを使って馬鹿正直に鵜呑みしてしまう警察官ヴァンドヴァンターを人間嘘発見器に仕立てたがーーー
16.青春時代
(The Fights of Spring)
……ジョージはアザゼルを使って「勉強」で自分を偽る青年の精神力をパワーアップさせたがーーー
17.ガラテア
(Galatea)
……ジョージはアザゼルを使って芸術家エルダベリーの像ハックを具現化してみせたがーーー
18.空想飛行
(Flight of Fancy)
……ジョージはアザゼルを使って空を飛びたい科学狂バルデュアのために飛行機械を与えるがーーー
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「小悪魔アザゼル18の物語」です(・∀・)
アシモフ一、ファンタジックに足を突っ込んでいるこのお話の最初は「ユニオン・クラブ綺談」ものとして書かれましたが、雑誌が求める系統が全然違う等々の理由から登場人物が変わって別物になりました。グリズウォルドがジョージになったのです。
ちなみに「アシモフぽくないなー、これ」と思った貴方は見事アシモフの思惑にハマったことになります。嬉しいような悔しいような（苦笑）
元が「ユニオン・クラブ綺談」なので話の流れは同じです。ジョージが一方的に「わたし(＝アシモフ)」に話をして気を引いて、ことの起承転結を語って聞かせて最後に金をまんまんと巻き上げるといった次第です。
グリズウォルドは金は取りませんが、話を聞いて欲しそうにするのは一緒だなぁ←
次はこの話の真の主人公ですが、名前はアザゼル。表紙のように身長2センチの真っ赤な悪魔です。
英国の古い城でジョージと出逢っちゃったアザゼルは普段は悪魔の世界にいますが、ジョージに呼ばれると機嫌悪くやってきます。
西洋では悪の根源して切っても切れない悪魔ですが、
ここで面白いのはこのアザゼルは人助けのためでしか力を使えない。というところです。定義と違うじゃん！← しかもこの悪魔、人がいいーーー間違えた、悪魔がいいので煽てられるとすぐジョージの願いを叶えてくれます。
ジョージは自分のためではなく、人のためにアザゼルを使って願いを叶えるのですが、悲しいかな、誰も幸せにならないんです。
幸せにならないというかみんな、ジョージやその対象者の思惑通りにならない、却って不便利になった、「こんなはずじゃなかった！」となってしまうのです。
最初はアザゼルが「悪魔」だからなのかなと思っていましたが、ちょっとジョージにも非があるな……と。詰めが甘かったり、首を突っ込まなくてもいいところに首を突っ込んでしまったり。特に13とかそう思えて後味悪いです。
1と16を読んで思いましたが、ジョージも「わたし」も「勉強なんて堕ちた奴のすること」と震えていますが、スポーツ推奨のアメリカだからってそれはないよ←
これ、アザゼルと対象者を一目会わせて対話させていたら結末はもっと違っていただろうなーと思います。
アザゼルとジョージの物語はこれでおしまいですが、変わった後味を残しましたとさ。
「小悪魔アザゼル18の物語」でした(･∀･)/
次はエラリー、四角関係の果てを見る！？