ミッチ・カリン◇ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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忘却と過去の中に真実がある。自らの記憶と向き合うホームズ。

 
 
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◇ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件◇ -Mr.Holmes-
ミッチ・カリン 駒月雅子 訳
 
 
引退後、サセックス・ダウンズで養蜂を営むホームズは、養蜂場の近くで、息子のような存在である助手の少年が死亡しているのを見つける―。ベイカー街時代の手記、日本での過去、イギリスでの現在…3つの事件から浮かび上がるホームズの知られざる過去と苦悩とは?晩年のシャーロック・ホームズを3つの事件からノスタルジックに描き出す傑作!!
 
 
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1947年。かつては華々しくたくさんの事件を解決したシャーロック・ホームズ。その彼も老い、いまは引退してサセックスで養蜂を営んでいる。
 
 
93歳のシャーロック・ホームズには死ぬ前にどうしてもやりたいことがあった。日本に行って物忘れに効くという山椒を取りに行くこと。自分が引退するきっかけになったケラー夫人事件を思い出し、書き記すこと。
 
 
どうして自分は引退することになったのか。ーーーそして自分は何を忘れているのか。 
 
 
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「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」です(・∀・)
 
 
実はわたしは映画はあまり観に行かないのですが、「SHERLOCK 忌まわしき花嫁」を観に行って以来、推理物と海外物映画はチェックするようになりました。それで観に行ったのが本書を原作にした「ミスターホームズ 名探偵最後の事件」です。
 
 
シャーロック・ホームズ。推理小説界の神的存在。彼を実在の人物であるかのように考える人も数知れず。そんな彼を題材にたくさんのパスティーシュが生まれました。「SHERLOCK」もその1つ。
 
 
そのパスティーシュ・ホームズの中で本書は斬新かついささかショッキングなホームズ像を披露しました。
それも93歳のホームズが日本(広島)に行く。そしてどうしても思い出せないことがある。
 
 
ホームズといえば鋭い記憶力も持ち味ですから結構、ショックな姿ですよね……。それでも鋭い推理力は生きています。全部が全部失われたわけではないが、今のままでは思い出したい記憶が手に入らない。もどかしいその姿にすごく切なくなります。
 
 
しかも93歳ホームズにはワトスンもハドスン夫人もレストレード警部もモリアーティもいません。みんな故人です。みんな彼を残して逝ってしまったのです。それも切ない(:_;)
 
 
別れもあれば出逢いもあるもので93歳ホームズはロジャーという名前の賢い男の子を助手にしています。家政婦の息子ですが、まるで息子と父、孫と祖父みたいで非常に微笑ましいです。
本書はあらすじでもあるように途中で終わっちゃいますが、映画の方ではそれが主体にもなっているので実にいいです。景色も綺麗ですし。ホームズが泣くところにわたしも泣きました。まさかあのホームズが泣くなんて……
 
 
日本に行くところはものすごく印象的です。科学を武器と信じていたホームズは広島でその科学の負の一面を見せられることになります。ものすごく皮肉で悲しいです。19世紀と20世紀の隔たりはあまりにも大きい。ウメザキとの出逢いと邂逅もなんとも言えない苦さがあります。
 
 
ケラー夫人事件も悲しい。当時のホームズは彼女を理解できなかったが、93歳になった今では理解できるというのは皮肉です。もしあの当時、彼女の心が本当に分かっていればあんな結末を迎えることはなかったのに……
 
 
この話は華々しい推理ドラマめいたところは何もないです。むしろ1人の老人が自分を振り返る人間ドラマです。景色も美しく、人間も美しく見えました。いちばん人間的なホームズがここにいます。
 
 
「ネガティヴだと思うその先に、希望が隠れているのかもしれない」ーーー東ちづるのコメントより。
 
 
ホームズと同じ歳になった時、わたしはこう思えるでしょうか? そしてその時、わたしの孤独を埋めてくれる存在はあるのでしょうか? いるのでしょうか?
そう思える道があると分かった今、歳を取ることに悲観的ではなくなりました。そう思えたことも大きいですね。
 
 
「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」でした(・∀・)/
次は……お待たせしました! 超久しぶりのディクスン・カーで「幻を追う男」です(*^o^*)/~